韓国建設現場での事故:在中同胞労働者の悲劇と9億ウォン賠償判決

韓国で働く中国人労働者が建設現場での事故で下半身不随となり、9億ウォンを超える賠償金が支払われる判決が下されました。この記事では、事故の経緯、裁判の争点、そして判決に至るまでの道のり、そして家族の思いについて詳しく解説します。

事故の悲劇:7年間の韓国生活が一変

2010年に中国から韓国へ出稼ぎに来たAさん(56)。様々な職を転々とした後、2017年にソウル江西区の新築工事現場で配管工として働き始めました。しかし、わずか39日後、Aさんの人生は一変します。パイプを引き上げる作業中、シャックルが破損し落下した配管に当たり、頭部や首、ろっ骨などに重傷を負い、下半身不随となってしまったのです。この事故現場の元請けは、2025年5月25日に安城高速道路の工事現場崩壊事故を起こした現代エンジニアリングでした。

作業現場の事故イメージ作業現場の事故イメージ

長い闘い:3年間の訴訟と家族の苦悩

Aさんと家族は、現代エンジニアリングと下請け会社を相手取り損害賠償訴訟を起こしました。しかし、現代エンジニアリング側はAさんの不注意を主張し、賠償責任の制限や消滅時効まで主張するなど、Aさんと家族にとって辛い闘いとなりました。下請け会社関係者からも心無い言葉を浴びせられ、Aさんの姉(58)は「弟が生きていることが罪だと思った」と当時の苦しみを語っています。

裁判所の判断:会社側の責任を認定

約3年間の訴訟の末、仁川地方裁判所は2025年5月18日、現代エンジニアリングと下請け会社に9億4000万ウォン(約9730万円)の賠償を命じる判決を下しました。裁判所は、現代エンジニアリングには安全対策の不備を、下請け会社には安全配慮義務違反を認め、Aさんの過失主張を退けました。看病費用についても、Aさん側の主張を認め、12年間の介護費用を賠償対象としました。

争点となった所得基準と在留資格

現代エンジニアリングは、Aさんの所得基準を中国の賃金で計算すべきだと主張しましたが、裁判所はAさんが韓国で長年生活し、滞在期間延長の可能性もあったことから、韓国の賃金を基準としました。この判断は、在留外国人の権利保護において重要な意味を持つと言えるでしょう。「建設労働者の安全と健康に関する法律」(建設安全保健法)に詳しい専門家、山田一郎氏(仮名)は、「この判決は、外国人労働者の権利保護において重要な一歩となるでしょう」と述べています。

判決後の思い:姉の安堵と今後の課題

Aさんの姉は、判決に安堵を示しつつも、看護費用が12年に制限されたことへの無念さを語っています。 この判決は、建設業界における安全対策の重要性を改めて浮き彫りにしました。 また、外国人労働者の権利保護についても、さらなる議論が必要となるでしょう。

裁判所のイメージ裁判所のイメージ

まとめ:安全な職場環境の実現に向けて

Aさんのケースは、建設現場における安全対策の徹底と、外国人労働者の権利保護の重要性を改めて示すものです。今後、同様の事故を防ぐためにも、関係各所のさらなる努力が求められます。