日本の文化、それは奥深く、多様な魅力に満ちています。侘び寂び、数寄、歌舞伎、真似び、そして漫画・アニメ。世界に誇るこれらの文化、私たち日本人はどれほど理解しているのでしょうか?本記事では、知の巨人・松岡正剛氏が説いた「日本文化の核心」に触れ、和の精神と荒ぶる魂の対比から、日本文化の真髄を探ります。
和の系譜、大和の心
「大和」という言葉には「和」の文字が含まれています。和む、和する、和らげる。これらの言葉は、日本人の精神性を象徴するキーワードと言えるでしょう。聖徳太子以来、日本の歴史は「和」の精神によって形作られてきました。令和、昭和といった元号にも「和」の文字が使われていることからも、その重要性が伺えます。歴史を紐解くと、和銅、承和、仁和など、「和」を用いた元号は実に20にも上ります。
「和」とは、物事を穏やかに調和させること。そして、この「和」は「大和」の和でもあり、和風、和様、和式といった言葉にも繋がり、「日本的」という意味合いを持つようになりました。しかし、「和」の意味はそれだけではありません。そこには、アマテラスを祖とする神々の系譜、すなわち「和する系譜」という意味も含まれているのです。
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アマテラスとスサノオ、光と影の対比
「和する系譜」と対になるのが「荒ぶる系譜」です。日本人の心には、この相反する二つの要素が深く関わっていると考えられてきました。それは「和御魂(にぎみたま)」と「荒御魂(あらみたま)」という言葉で表され、神々にもこの二つの側面があると信じられてきました。優しく穏やかな魂が和御魂、力強く荒々しい魂が荒御魂です。さらに、和御魂の中には幸御魂(さきみたま)と奇御魂(くしみたま)が秘められているとも言われています。
日本神話において、イザナギの禊から生まれた三貴子、アマテラス、ツクヨミ、スサノオ。姉であるアマテラスは高天原を、弟のスサノオは海原を治めるよう命じられました。そして、彼らの行動は、和御魂と荒御魂の象徴となりました。このアマテラスとスサノオの対比こそ、日本文化を理解する上で非常に重要な鍵となるのです。
調和と混沌、日本文化の二面性
料理研究家の山田花子さん(仮名)は、「日本の食文化にも、和御魂と荒御魂の両面が見られる」と指摘します。「繊細な懐石料理は和御魂の象徴であり、豪快な祭り料理は荒御魂を表していると言えるでしょう。この二つの要素が絶妙に調和することで、日本の食文化は豊かな彩りを放っているのです。」
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「和」を重んじる日本文化の中に、時に「荒ぶる魂」が垣間見える。この二面性が、日本文化の奥深さであり、魅力と言えるのではないでしょうか。静と動、光と影、調和と混沌。相反する要素が共存することで、日本文化は独自の進化を遂げてきたのです。この複雑で奥深い世界を探求することで、私たちは日本文化の真髄に触れることができるでしょう。