高額療養費制度の見直し議論が世間を賑わせています。現役世代の負担増ばかりが注目されていますが、もっと根本的な問題、つまり「命の値段」について、真剣に議論する時期に来ているのではないでしょうか。
無駄な延命治療に莫大な費用が投じられている現実
現代医療は目覚ましい進歩を遂げ、多くの命を救えるようになりました。しかし、一方で、助かる見込みの低い患者への延命治療に、莫大な医療費が費やされているのも事実です。例えば、80代の男性が3年半にわたる延命治療で7400万円もの医療費がかかったケースが報告されています。患者の自己負担は190万円ほどで、残りは税金と現役世代の保険料で賄われました。もちろん、大切な家族を少しでも長く生かしておきたいという気持ちは理解できます。しかし、患者本人にとって苦痛しか残らない延命治療を続けることが、本当に正しい選択と言えるのでしょうか?
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欧米では主流の考え方「無益な延命治療は道徳的に正当化できない」
欧米の医療倫理学では、「患者にとって利益のない医療は行うべきではない」という考え方が主流になっています。これは決して命の軽視ではなく、限られた医療資源をより効果的に活用するための、現実的な選択です。医療経済学者である田中一郎氏(仮名)は、「無益な延命治療に固執することで、本当に救える命を見過ごしてしまうリスクがある」と指摘しています。
日本人の意識:「延命治療よりも自然にまかせてほしい」
実は、多くの日本人も、過剰な延命治療に疑問を抱いているようです。内閣府の調査によると、65歳以上の91%が「延命のみを目的とした医療は行わず、自然にまかせてほしい」と回答しています。終末期医療に関する具体的な基準を設けることは容易ではありませんが、国民の意識はすでに変化しつつあると言えるでしょう。
具体的な対策:終末期医療の基準策定
「意識がなく、身体的な反応もない状態の患者に対する延命治療は、公的保険の適用外とし、希望する場合は家族が自費で負担する」といった基準を設けるだけでも、相当額の医療費を節約できるはずです。節約された費用は、より多くの命を救うための医療に回すことができます。
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医療資源の適切な分配:「命のトリアージ」
限られた医療資源を最大限に活用するためには、「命のトリアージ」という考え方が必要です。これは、災害医療の現場などで用いられる考え方で、限られた医療資源をより多くの命を救える患者に優先的に分配するというものです。命の重さに優劣をつけるのは辛い選択ですが、避けられない現実として直視する必要があります。
結論:医療の未来のために、議論を始めよう
高額療養費制度の見直しは、日本の医療システム全体のあり方を見直す良い機会です。「命の値段」という難しいテーマに正面から向き合い、国民的な議論を深めていくことが、未来の医療を守るために不可欠です。