量子コンピューターから量子暗号通信まで 脅威の計算能力と絶対安全な通信技術がもたらす未来図とは【今、学んでおきたい量子力学入門】


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耐量子計算機暗号で量子コンピューターに対抗

 従来型のコンピューターは素因数分解が苦手だ。617桁の数を素因数分解するにはスーパーコンピューターでも10億年以上かかるといわれている。そのため、現代のネット通信などで使われている暗号技術には「RSA暗号」を筆頭に素因数分解の仕組みで安全性を担保するものが多い。だが、ショアのアルゴリズムの登場で、量子コンピューターがそうした暗号をたやすく解読してしまう可能性が示されたのである。

 1990年代当時、量子コンピューターはまだコンセプト段階で、実機の登場には半世紀ほどかかるといわれていたため危機感は小さかったが、2000年代になってから研究開発が進み、2010年代には巨大IT企業も参入して開発競争が本格化していった。

 東芝デジタルソリューションズ(株)ICTソリューション事業部 QKD事業推進室 シニアフェローの村井信哉さんによれば「現在、大企業からスタートアップまで多くの企業が量子コンピューターの研究開発に取り組んでおり、同時並行でさまざまな課題が解消されているので、これまでの想定以上のスピードで実用化に迫っている」という。

 2016年には、ついにアメリカのNIST(National Institute of Standards and Technology/米国立標準技術研究所)が「RSAやDSA、ECDSAといった既存の公開鍵暗号は〝no longer secure〟(もはや安全ではない)」と断言、2030年までにより強度の高い暗号に移行することを推奨し、数年の検証を経て2024年、量子コンピューターを用いたサイバー攻撃に耐え得る「耐量子計算機暗号/PQC(Post-Quantum Cryptography)」を複数公開した。現在ではこの新たな耐量子計算機暗号の導入が世界各国で始まっているそうだ。



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