山口県警自動車警ら隊の巡査長、山口直人さん(29)が2月7日深夜、岩国市内の国道2号で交通事故対応中に大型トラックにはねられ、殉職されました。山口さんはレスリングの全日本社会人選手権グレコローマンスタイル130キロ級で3連覇を達成するなど、文武両道で活躍されていた方でした。この記事では、山口さんの功績と人となり、そして突然の訃報に際しての関係者の悲痛な思いをお伝えします。
悲劇の事故現場とレスリングへの情熱
2月7日深夜、山口県岩国市の国道2号で発生した交通事故。現場対応にあたっていた山口さんは、不幸にも大型トラックにはねられ、病院に搬送されましたが、出血性ショックで帰らぬ人となりました。凍結した路面での事故対応という危険な状況下での殉職は、関係者だけでなく地域社会にも大きな衝撃を与えました。
交通事故対応中の山口県警巡査長をはねて止まった現場の大型トラック。現場の路面は降雪で凍結していた
山口さんは愛媛県出身で、高校時代にレスリングを始めました。大学は山口県周南市の徳山大学(現・周南公立大学)に進学し、4年時には全日本大学選手権で準優勝という輝かしい成績を残しています。卒業後は「自分のパワーを生かして地域に貢献したい」という強い思いから山口県警に奉職し、警察官としての道を歩み始めました。
練習で相手に技をかける山口さん(左)
職務と競技、二足のわらじで輝きを放つ
警察官としての職務を全うしながらも、レスリングへの情熱は冷めることなく、母校の周南公立大学で練習を続けました。その努力は実を結び、2022年から全日本社会人レスリング選手権で3連覇という偉業を達成。生前、読売新聞の取材に対し、「警ら隊員として一人前にならないといけないし、競技への期待にも応えなければならない」と語っていた山口さん。その言葉からは、強い責任感と向上心が窺えます。
後進育成にも尽力、温かい人柄偲ばれる
山口さんはレスリングの技術向上だけでなく、後進の育成にも力を注いでいました。普段から一緒に練習する後輩が国際大会で日本代表に選出された際には、「私より後輩を取り上げてやってください」と謙虚に、そして後輩の活躍を心から喜んでいたといいます。
周南公立大学レスリング部監督の守田泰弘さん(37)によると、山口さんは事故の数日前も練習に参加し、熱心に後輩を指導していたとのこと。守田さんは「面倒見が良いことに加え、自身も辛抱強く練習に励んでいた。次の大会でも優勝を目指していただけに、言葉にならない」と深い悲しみを語っています。
競技に真摯に向き合い、後輩思いの温かい人柄が偲ばれます。スポーツ界、そして地域社会にとって大きな損失と言えるでしょう。
惜しまれる若き才能、その功績を胸に
29歳という若さで命を落とした山口さん。その早すぎる死は、多くの人々に深い悲しみと衝撃を与えました。文武両道で活躍し、地域貢献に尽力していた山口さんの功績は、いつまでも私たちの記憶に残ることでしょう。ご冥福をお祈りいたします。