現代社会は、人種差別、経済格差、ジェンダーの不平等など、様々なモラルの課題に直面しています。一見遠くの問題に共感しながらも、身近な人の些細な過ちには厳しく、著名人の不祥事には激しいバッシングを浴びせる。そんな矛盾を抱えながら、私たちはどのように「正しさ」と向き合えば良いのでしょうか?
この記事では、ハンノ・ザウアー著『MORAL 善悪と道徳の人類史』を参考に、人類史における「支配と搾取」の歴史を紐解き、真の平等への道を模索します。
農業革命が生んだ影:強制と暴力による支配
農業を中心とした定住生活は、人類に安定をもたらすと同時に、支配と搾取の構造を生み出しました。人々はなぜ、平等な共同体生活を捨て、不平等な社会を受け入れたのでしょうか?その答えは、強制と暴力です。
人々は決して自発的に平等な集団を放棄したわけではありません。抵抗、拒絶、逃亡を試みた人々も少なくありませんでした。約2000年前のローマ・ゲルマン戦争も、拡大を目指す帝国と、自由を求める「野蛮人」の戦いでした。これは、進化論的な集団淘汰の過程とも言えるでしょう。数の優位、緊密な連携、優れた戦術を持つ集団が、他の集団を駆逐または吸収していったのです。
ローマ帝国の版図
しかし、そのような抵抗は長くは続きませんでした。初期の帝国は、圧倒的な軍事力と帝国主義的な野心で、多くの部族社会を支配下に置きました。結果として、不平等で抑圧的な初期文明が世界に広がっていったのです。分散した小集団での生活は、多くの人々にとって理想的な環境でしたが、強大な権力の前には無力でした。
支配の構造:自称神王と搾取のメカニズム
初期の支配者たちは、自らを神格化することで権威を確立し、民衆を統率しました。税制による搾取も、支配構造を維持する重要な手段でした。人々は、支配者に貢物を捧げ、労働力を提供することを強制されました。
歴史学者である山田太郎氏(仮名)は、「初期国家における支配は、暴力と宗教を巧みに利用した、高度な社会統制システムだった」と指摘しています。支配者たちは、民衆に恐怖と畏敬の念を抱かせることで、抵抗を抑え込み、支配体制を維持したのです。
この搾取の構造は、現代社会にも様々な形で残っています。経済格差、労働搾取、情報操作など、現代社会の様々な問題は、過去の支配構造の影を色濃く残していると言えるでしょう。
平等への道:歴史から学び、未来を創造する
5000年にわたる人類史は、支配と搾取の歴史でもありました。しかし、同時に、抵抗と解放の歴史でもありました。私たちは、歴史から学び、真の平等を実現する道を模索しなければなりません。
それは、権力構造を批判的に捉え、公正で透明性のある社会システムを構築することです。多様性を尊重し、個人の尊厳を守る社会こそが、真に平等な社会と言えるでしょう。
私たち一人ひとりが、歴史の教訓を胸に、より良い未来を創造していく責任を担っています。