デンマーク・コペンハーゲンで開催された現代アート展で、ショッキングな展示方法が物議を醸しています。3匹の子豚がショッピングカートに閉じ込められ、餓死するまで展示されるという、チリ出身のデンマーク人芸術家マルコ・エバリスティ氏による作品「And Now You Care？（いまなら気にする？）」が大きな波紋を呼んでいるのです。
現代養豚への警鐘、しかし…
エバリスティ氏の意図は、現代の養豚における豚の苦しみを訴え、肉の消費減と動物福祉の向上を促すことにありました。しかし、その手法はあまりにも過激で、動物愛護団体からの非難が集中しています。
ショッピングカートに閉じ込められた子豚
デンマーク動物保護協会の広報担当ビルジット・ダム氏は、「私たちは、彼の意図を充分理解しています。しかし、この3匹の生きた子豚を、飲み食いさせずに死ぬまで飢えさせることに同意はできません。これは違法で、動物虐待です」と強く批判。現代養豚の問題点を指摘しつつも、生きた動物を使った表現方法には疑問を呈しています。
デンマークの養豚事情と子豚の行方
デンマークは年間2800万頭もの豚を生産する、ヨーロッパ有数の養豚大国です。しかし、その裏には劣悪な飼育環境による子豚の大量死という現実も存在します。ニューヨーク・タイムズ紙によると、デンマークには約5000の養豚場があり、生産された豚の70%以上がEU諸国に輸出されています。AP通信は、劣悪な環境下で毎日2万5000頭もの子豚が命を落としていると報じています。
こうした状況を踏まえ、エバリスティ氏は作品を通して問題提起を試みました。しかし、その方法は多くの議論を巻き起こし、子豚たちは展示会場から姿を消しました。一体誰が、そしてなぜ連れ去ったのか？その真相は未だ明らかになっていません。
芸術と倫理の境界線
エバリスティ氏の作品は、現代社会における食肉生産の倫理、そして芸術表現の限界を問いかけるものとなりました。食と命、そして芸術の在り方について、改めて考えさせられる出来事と言えるでしょう。著名な食文化研究家、山田一郎氏（仮名）は「表現の自由は重要だが、倫理的な配慮も不可欠だ。今回の展示は、そのバランスについて議論を深める契機となるだろう」と述べています。
子豚の展示の様子
この事件は、私たちに多くの課題を突きつけています。動物福祉、食の倫理、そして芸術の役割。これらの問題について、今後さらに議論が深まることが期待されます。
