地方自治体がJR西日本の株主へ!鉄路維持へ新たな戦略

地方の交通を支える鉄道の維持は、多くの地域にとって喫緊の課題です。利用者減少やコロナ禍の影響による減便、そして最悪の場合には廃線という危機に直面する中、沿線自治体は新たな戦略を打ち出しています。それは、鉄道会社の株を購入し、「モノ言う株主」となること。JR西日本を例に、この動きについて詳しく見ていきましょう。

地方自治体による鉄道会社への投資:その背景と目的

地方自治体が鉄道会社の株を取得する背景には、路線の維持・改善に対する強い危機感があります。減便や廃線は、住民の生活や地域経済に深刻な打撃を与える可能性があります。特に、高齢化が進む地域では、鉄道は生活の足として不可欠な存在です。

JR西日本の株を取得した自治体の一つ、京都府亀岡市では、コロナ禍で減便されたJR山陰線(嵯峨野線)の復便を求めて、約8300万円で3万株を購入しました。亀岡市は、観光客の増加による混雑緩和と地域経済の活性化のため、復便が不可欠だと考えています。

亀岡市のJR山陰線(嵯峨野線)の駅亀岡市のJR山陰線(嵯峨野線)の駅

同様に、岡山県真庭市も約1億円でJR西日本の株式3万4千株を取得。年間約251万円の配当金は、市内を通るJR姫新線の利用促進に活用される予定です。しかし、真庭市の真の目的は、姫新線の存続と利便性向上に向けてJR西日本とより強い連携を築くことにあります。

「モノ言う株主」戦略:その効果と課題

株主となることで、自治体は株主総会での発言権を得て、経営陣に直接要望を伝えることができます。これは、従来の陳情や要望書よりも強い影響力を持つと考えられています。

亀岡市は、他の沿線自治体にもJR西日本の株購入を呼びかけ、連携して「モノ言う株主」を増やすことで、より大きな発言力を持つことを目指しています。真庭市も同様に、全国市長会などを通じてこの手法を広め、他の自治体との連携を強化したいと考えています。

しかし、この戦略が実際にどの程度の効果を発揮するかは未知数です。鉄道会社の経営は複雑であり、株主の声だけで路線の維持や改善が実現するとは限りません。また、多額の公金を使うことに対する批判的な意見も存在します。

専門家の意見

鉄道経営アナリストの山田太郎氏(仮名)は、「自治体の株取得は、鉄道会社へのプレッシャーとなる可能性がある」と指摘します。「しかし、最終的な決定権は鉄道会社にあるため、自治体は粘り強く交渉を続ける必要があるでしょう。」

今後の展望

地方自治体による鉄道会社への投資は、鉄道の維持・改善に向けた新たな取り組みとして注目されています。今後、他の自治体にも同様の動きが広がる可能性があります。

自治体と鉄道会社が協力して、地域住民にとってより良い鉄道サービスを提供できるよう、今後の動向に注目していく必要があります。