武藤容治経済産業相は10日、米首都ワシントンでラトニック商務長官、グリア米通商代表部(USTR)代表と会談し、トランプ米政権が12日に発動する鉄鋼・アルミニウム関税などについて日本を適用除外にするよう求めた。会談後の記者会見で、武藤氏は「日本を除外するという話にはなっていない」と述べ、米国側から一定の理解は得られたものの、適用除外の言質は取れなかったことを明らかにした。
経産省によると、武藤氏は会談でラトニック氏らに対し、日本がこれまで巨額投資や雇用創出を通じて米国経済に多くの貢献をしてきたと主張。関税の影響についても説明し、「我が国が対象になるべきではない」と明確に適用除外を求めた。
これに対し、米国側は米製造業の復活や雇用増加など、トランプ政権の優先課題を説明。日本のこれまでの貢献に一定の理解を示しつつも、適用除外の有無に関して明言しなかった。経産省幹部は「言うべきことは言った。後は待つしかない」と述べた。
会談では、関税を中心とした経済問題について日米が緊密な協議を始めることで合意。経産省は、早ければ来週にも事務レベルの協議に着手したい考えだ。
武藤氏は会見で「今回の議論を踏まえ、どのように日米の国益をウィンウィンにしていくことができるのか、緊密に協議を進めていく」と述べた。
武藤氏は、日本製鉄によるUSスチール買収については「具体的なやりとりは控える」と述べるにとどめた。また、トランプ政権が4月2日に予定する「相互関税」について、規制や税制などの「非関税障壁」で何が問題になるのか詳細な議論はなかったという。
トランプ政権は3月12日に全ての国に対して鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を発動する予定。1次政権時代に始めた後、多くの国に対して設けた適用除外を廃止し、アルミについては従来の10%から25%に引き上げる。日本も一定量までは鉄鋼を関税ゼロで輸出できていたが、発動後は25%の関税が課される。
さらに米国は4月2日から、全ての国を対象にした相互関税や自動車関税を始める予定。日本は米国に多くの自動車を輸出しており、深刻な影響が出る恐れがある。【ワシントン大久保渉】