韓国とインドネシアが共同開発を進めている国産戦闘機KF-21「ポラメ(若鷹)」をめぐり、インドネシア側の分担金が当初予定の3分の1に減額されることになり、開発企業である韓国航空宇宙産業(KAI)に大きな負担が生じている。本稿では、この問題の背景と今後の影響について詳しく解説する。
インドネシアの分担金減額:KAIへの負担増
投資銀行業界の情報によると、韓国政府はインドネシアの未払い分約4700億ウォン(約481億円)のうち、74.5%に当たる約3500億ウォンを韓国政府が、残りの25.5%に当たる約1200億ウォンをKAIが負担する案を検討している。KAIの負担割合については、更なる増加を求める声も上がっているという。
altKF-21戦闘機 開発費用負担のグラフ
KF-21の開発は2015年から2026年までの予定で、総事業費は約8兆1000億ウォン。当初、インドネシアは事業費の20%(約1兆7000億ウォン、後に1兆6000億ウォンに減額)を負担し、試作機1機と技術資料の提供を受ける代わりに、48機のKF-21を国内で生産する計画だった。韓国側は、政府が60%、KAIが20%を負担することになっていた。
しかし、インドネシアの財政難により、支払われた分担金はわずか4000億ウォン(総額の25%)にとどまっている。韓国政府は2022年8月にインドネシアの分担金を6000億ウォンに減額する調整案を提示し、インドネシアは2024年から2026年に年間平均約1070億ウォンを支払う予定となっている。
KAIの苦境:開発費削減努力もむなしく
KAIは開発過程で費用を削減し、総開発費を約6%減額したものの、インドネシアの分担金減額分の一部を負担することになり、結果的に当初予定の約1兆6000億ウォンに加え、約1200億ウォンの追加負担が発生する見込みだ。これはKAIの2022年の営業利益の7倍以上に相当する金額である。
韓国防衛事業庁は、「政府と企業は不足する財源を共同で分担するという原則に合意しており、国家財政状況や企業の経営状況を考慮しながら協議を進めている。分担比率は未定」と説明している。
インドネシアとの共同開発継続の背景
韓国政府とKAIがインドネシアとの共同開発を継続する理由は、インドネシアがKF-21の最初の顧客だからだ。インドネシアは48機のKF-21を購入することを条件に共同開発に参加している。過去にも、インドネシアは韓国製の基本訓練機KT-1や高等訓練機T-50などを購入している。
altKF-21戦闘機
防衛産業界の関係者は、「分担金減額の代わりに技術移転の範囲を縮小することで合意したと聞いています。政府主導で分担金を減額したにもかかわらず、民間企業がその一部を負担するのは残念」と述べている。韓国防衛事業庁はインドネシア国防省に度々支払いを促す書簡を送っているものの、満足な回答は得られていないのが現状だ。
今後の展望と課題
KF-21は韓国の航空宇宙産業にとって重要なプロジェクトであり、インドネシアとの共同開発は輸出戦略上も大きな意味を持つ。しかし、インドネシアの財政状況は予断を許さず、今後の開発計画や輸出戦略への影響が懸念される。韓国政府とKAIは、インドネシアとの協力関係を維持しつつ、プロジェクトを成功に導くための難しい舵取りを迫られている。 航空宇宙産業アナリストの田中一郎氏は、「KF-21の成功は韓国の防衛産業の未来を左右する。インドネシアとの協力関係を維持しつつ、リスクを最小限に抑える戦略が求められるだろう」と指摘する。