全世界約12億人のカトリック教徒の頂点に立つローマ法王フランシスコが、11月23日から26日までの4日間、来日し、東京、長崎、広島を訪問する。
昨年1月下旬、法王がチリおよびペルー訪問に赴く機中のことである。同行記者団との懇談の席上、あらかじめ用意してきた一枚の写真を配って、言った。
「これが核戦争のもたらすものだ。偶然この写真を入手したが、1945年、長崎に原爆が投下された直後、少年が死んだ弟を背負い火葬場の列に並んでいる姿を写している。多くの言葉の羅列より、もっと胸を打つものだ」
記者の一人が「法王は核戦争を恐れておられるのですか」と質問したところ、法王はこう答えた。「そうだ。われわれは今、瀬戸際に立たされており、何かの偶発的出来事が事態を急変させ得る。核兵器は廃絶しなければならない」
法王が記者団に配ったという写真の少年の姿をよく見ると、法王が説明した内容とはやや場面が違うような気もするが、そんなことは重要な問題ではない。
カトリック教徒の多い長崎の被爆者の姿が法王の胸を強く打ち、核兵器廃絶への信念を固めさせたことは紛れもない真実である。長崎、広島を訪問された後、声を高くして全世界に核兵器廃絶を訴えていただきたい。(坂本鉄男)