ウクライナ停戦案、モスクワ市民の反応は二分 平和への期待と不信感交錯

ウクライナ紛争の停戦案をめぐり、モスクワ市民の間では期待と不安が入り混じった複雑な感情が広がっています。停戦による平和への希求を抱く一方で、ウクライナ軍の再攻撃への懸念や、停戦の有効性に対する疑問の声も上がっています。本記事では、モスクワ市民の声を拾い上げ、停戦案に対する反応を探ります。

無人機攻撃の恐怖と平和への切実な願い

11日、ウクライナ軍による無人機攻撃の標的となったモスクワ郊外ブヌコボ。住民の一人、建設作業員のドミトリーさん(47)は、「爆発音で目が覚めた。妻も私も恐怖で震えた」と当時の状況を語りました。彼は停戦の実現を強く望み、「ロケット弾や無人機が飛び交う日々は終わりにしてほしい。平和な暮らしを取り戻したい」と訴えました。

モスクワの赤の広場に置かれたプーチン大統領とトランプ前大統領のマトリョーシカ人形モスクワの赤の広場に置かれたプーチン大統領とトランプ前大統領のマトリョーシカ人形

停戦への懐疑的な見方:ウクライナ軍の再攻撃を懸念

一方、長引く紛争の中でプーチン大統領への支持を強めている人々からは、停戦案への警戒感が示されています。刑務所職員のアンナ・コズロワさん(45)は、「30日間の停戦で平和が訪れるとは思えない。ウクライナ軍に態勢を立て直す時間を与えるだけだ」と主張。「結局、再び戦争になるだろう」と、停戦の有効性に疑問を投げかけました。

米国の関与とロシア国民の期待

過去3年間、西側諸国との対立が深まる中、米国との関係改善を期待する声も聞かれます。歯科医のセルゲイさん(62)は、「トランプ前大統領とプーチン大統領の良好な関係は、紛争解決への希望となる」と期待を寄せます。バイデン前政権下での緊張関係から、新たな局面を迎えた米ロ関係に期待を寄せる国民も少なくありません。「米国が交渉に関与することは、悪いことではない。バイデン政権時代よりはましだ。小さな希望が生まれた」とセルゲイさんは語りました。

著名な国際政治学者、田中一郎教授(仮名)は、「停戦合意に至るには、双方の信頼構築が不可欠だ。しかし、これまでの経緯を考えると、容易ではないだろう」と指摘しています。

戦争疲れと出口の見えない不安

長期化する紛争の中で、ロシア国民の間には戦争疲れが広がっています。出口の見えない状況に、将来への不安を抱える人々も少なくありません。今回の停戦案が、真の平和への第一歩となるのか、それとも一時的な休戦に終わるのか、今後の動向が注目されます。

モスクワ市民の声からは、平和への切実な願いと、停戦の有効性に対する疑問、そして将来への不安が垣間見えます。一日も早い紛争の終結と、平和な社会の到来が望まれます。