地上波ギリギリ…? 残酷描写が物議を醸した名作ドラマ(2)これ映していいの? 群を抜いて過激なサスペンス


『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(2016、フジテレビ系)

【作品内容】

 藤堂比奈子(波瑠)は、優秀な成績で警察学校を卒業した真面目な新人刑事でありながら、心に深い闇を抱えていた。そんな彼女が刑事になった理由は、人を殺す者と殺さない者の“境界線”を解明するため。

 痛ましい遺体を目にした比奈子は、殺人犯の心理に異常なまでの興味を抱く。彼女は自身の疑問の答えを見つけることができるのか?東海林泰久(横山裕)をはじめとした先輩刑事や監察医・石上妙子(原田美枝子)らに助けられながら、比奈子は異常犯罪者たちと対峙していく。

【注目ポイント】

 犯罪者に対して並外れた興味を持つ新人刑事・藤堂比奈子を主人公とした『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』。原作は、内藤了によるミステリ小説「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズで、その第1弾「ON」は第21回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞している。

 口に大量の飴玉を詰め込まれ腹を切り裂かれた少女の遺体、口にブリーフを押し込まれた変色しきった男性の遺体、口いっぱいに100円玉が流し込まれた金に溺れた遺体など…。タイトルに“異常犯罪”とあるように、これまで放送されてきた数あるミステリードラマを並べても、群を抜く過激さがある。

 そのリアルで強烈なインパクトを放つ遺体描写は、放送当時、残虐表現への配慮を求める声が上がったほど。だが、そんな残酷的シーンに、不快な感情を超えて、もはや芸術的な美麗さを感じてしまうのが本作の妙でもある。

 また、 犯罪者心理やプロファイリングの濃密さも印象深い。たとえば、第2話では外で椅子に座ったままの氷漬死体が発見される。遺体を持ち運びたいのならバラバラにすればいいが、今回の事件では椅子に座らせ移動させようとしている。つまり、隠蔽工作のような作業ではなく、いわゆる引越しの感覚で、犯人は遺体に愛着を持っている、と。考えもつかないような犯罪者の心理。その、まるで深淵をのぞくかのようなゾワゾワした感覚に、興味と好奇心を掻き立てられて仕方がない。

 良くも悪くも比奈子を受け止められてしまう心療内科医の中島(林遣都)。そして、頭を引っ叩いて“こちら側”に連れ戻してくれる先輩刑事・東海林。対極に位置する彼らと比奈子の、儚くも温かい関係性も唯一無二である。続編が熱望される、秀作だ。

西本沙織



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