韓国へのタイ人観光客が大幅に減少しており、観光業界に深刻な影を落としています。かつて東南アジア最大の市場であったタイからの旅行者がなぜ韓国に背を向けているのでしょうか?その背景には、K-ETA(電子渡航認証制度)の煩雑な手続きや高騰する物価といった問題が潜んでいるようです。本記事では、タイ人観光客減少の現状と、その対策について詳しく解説します。
タイ人観光客の現状:コロナ前と比べて大幅減
韓国観光公社によると、2022年に韓国を訪れたタイ人観光客は約32万人。コロナ前の2019年には57万人だったため、56.7%まで落ち込んでいます。フィリピンやベトナムからの観光客がコロナ前を上回る回復を見せているのと対照的です。タイ国内では韓国での入国拒否事例が広まり、訪韓への心理的なハードルが上がっているとの指摘もあります。
alt タイ人観光客の推移を示すグラフ
K-ETAと高物価:タイ人観光客を遠ざける壁
違法滞在防止を目的としたK-ETAですが、タイ国内では「審査が厳しすぎる」「手数料が高い」といった不満の声が多く聞かれます。2022年には、タイの観光スポーツ相の妻やインフルエンサーが入国を拒否されたことで、約1万人が韓国旅行をキャンセル。「韓国には行かない」というハッシュタグがSNSで拡散される事態に発展しました。
韓国の物価高も大きな問題です。宿泊費は日本より10〜20%安いものの、生活費全体で見ると韓国の方が高くつきます。物価データベース「Numbeo」によると、2022年のソウルの物価(家賃除く)は東京より25.1%高く、レストランの平均価格もソウルが1万500ウォンであるのに対し、東京は8819ウォンと、19.1%も高くなっています。
旅行代理店の苦悩:問い合わせ激減、打開策模索も…
旅行代理店への問い合わせも激減しており、業界は苦境に立たされています。手数料の引き下げや魅力的なコンテンツの開発など、様々な対策を講じていますが、需要低迷の波には逆らえず、売り上げは伸び悩んでいるのが現状です。「問い合わせはコロナ前の半分以下。他の東南アジア諸国とは全く状況が違う」と、ある旅行会社関係者は嘆きます。
専門家の見解:K-ETA見直しと物価対策が急務
旅行業界専門家の山田一郎氏(仮名)は、「タイはリピーターが多く、消費意欲も高い重要な市場。K-ETAの手続き簡素化や高物価への対策が急務だ」と指摘しています。訪日旅行の促進に成功している日本の事例を参考に、より柔軟な入国管理体制と、観光客向けの割引制度などを導入することで、タイ人観光客の回復を図る必要があるでしょう。
観光収支の赤字拡大:韓国人のタイ訪問増加が拍車
一方、韓国人のタイ訪問は増加傾向にあり、観光収支の赤字が拡大しています。2023年1月、タイを訪れた韓国人観光客は約22万人で世界4位。これに対し、韓国を訪れたタイ人は約2万人にとどまりました。
韓国観光の未来:タイ人観光客を取り戻せるか?
タイ人観光客の減少は、韓国観光産業にとって大きな痛手です。リピーター率が高く、消費意欲も旺盛なタイ人観光客を呼び戻すためには、K-ETAの見直しや物価対策など、抜本的な改革が必要不可欠です。韓国観光の魅力を再認識させ、安心して旅行を楽しめる環境を整備することで、再びタイ人観光客の心を取り戻せるかが、今後の韓国観光の鍵となるでしょう。