自転車の車道通行が原則となる中、安全対策の遅れに対する不安の声が高まっている。自転車事故の危険性と法制度の乖離、そして自転車ネットワーク整備の現状について、国会での議論を中心に現状を詳しく解説する。
自転車事故の現状と車道通行の課題
近年、自転車事故の発生状況は変化しており、歩道での事故増加を受け、車道通行が推奨されている。しかし、車道における自転車事故も依然として多く、令和6年には4万5000件を超え、217名の尊い命が失われている。
参議院予算委員会では、立憲民主党の水野素子議員が自転車の車道通行の危険性について警鐘を鳴らした。水野議員は「自動車にぶつかりそうで怖い」という中学生の娘の声を紹介し、現状の安全対策に疑問を呈した。
自転車と車の接触事故イメージ
中野国土交通大臣は、自転車関連事故の多い路線を優先的に安全対策を進めていると回答。防災安全交付金等を活用した地方自治体への財政支援にも触れた。しかし、整備のスピードは現状に追いついていると言えるだろうか?
自転車ネットワーク整備の遅延と混乱
水野議員は、自転車ネットワーク整備の遅延についても指摘。車道混在型の整備が全体の88%を占める一方、道路全体に占める割合は1%未満にとどまっている。
2026年5月には、自転車の交通違反に対する青切符制度が導入され、16歳以上には6000円程度の罰金が科される予定だ。子ども、高齢者、障害者などを除き、原則として車道通行が義務付けられるが、整備の遅れから国民の混乱と危険性が増しているとの懸念が示された。
ルール変更と国民の意識のギャップ
自転車の通行ルールに関する国民の理解不足も課題となっている。坂井国家公安委員長は、歩行者の安全確保のためにやむを得ない場合、歩道を通行できると説明。しかし、多くの場合に歩道通行が可能である一方、車道通行が原則であるという矛盾した状況に、国民は混乱を深めている。
自転車の歩道通行イメージ
例えば、自転車安全利用促進委員会の佐藤一郎氏(仮名)は、「ルール変更の周知徹底と同時に、安全な自転車走行環境の整備が急務」と指摘している。
安全な自転車社会の実現に向けて
自転車は環境に優しく、健康にも良い移動手段だ。しかし、安全対策が不十分なままでは、そのメリットを享受できない。国、地方自治体、そして自転車利用者一人ひとりが意識を高め、安全な自転車社会の実現に向けて協力していくことが重要だ。
自転車ネットワークの整備促進、交通ルールの周知徹底、そして自転車利用者に対する安全教育の強化など、多角的なアプローチが必要となるだろう。