大阪・関西万博の閉幕まで残り40日を切り、その経済的側面と来場者数の動向が注目されている。当初目標とした想定来場者数には届かない見通しであるものの、夏の期間における来場者増が運営費の黒字化に貢献する見込みだ。会場建設費の膨張など多くの課題が指摘されてきた万博だが、運営面では新たな税金投入を免れる可能性が高まっている。
運営費の黒字化達成、追加の税金投入を回避へ
万博にかかる費用のうち、人件費やイベント費用などを含む「運営費」1160億円の大半は、入場券収入で賄われる計画だ。日本国際博覧会協会(万博協会)は8月18日、入場券の売上高が「運営黒字化ライン」とされる969億円を超過したと正式に発表した。これは、運営に関する追加的な税金投入が不要となることを意味しており、財政面での懸念が一部解消された形となる。
万博会場で熱中症の来場者を運ぶ救護隊
「夏パス」が来場者増に大きく貢献
本記者は8月29日に万博会場を訪れた際、東ゲート前には朝早くから長蛇の列ができていたことを確認した。2時間待ちの人気パビリオン前で順番を待っていた親子連れからは、「家族5人分の夏パスを購入し、お得感がありました」「夏休み中にあと何回か来たいです」といった声が聞かれた。来場者数の増加を後押ししたのは、夏休み期間(7月19日~8月31日)中であれば何度でも入場できる「夏パス」の存在が大きかった。
万博協会関係者は、「夏パスは約28万枚近く売れ、7月、8月の集客に大きく貢献しました。大人1万2000円、子ども3000円という価格設定も成功要因だったと認識しています」と語っている。さらに、夏パスの有効期限が迫った8月30日には、約18万7400人もの来場者を記録し、開幕以来最多の一日となった。
総来場者数は目標2820万人に届かずか
しかしながら、総来場者数に関しては、万博協会が誘致段階から掲げてきた想定の2820万人には達しない見込みだ。8月30日時点での一般来場者数の合計は約1657万人。万博会場で勤務する関係者やマスコミ関係者を含めても約1908万人にとどまっている。閉幕日の10月13日まで毎日、最多記録である18万7400人が来場し続けたとしても、2820万人の目標達成には及ばない計算となる。
関西経済連合会の会長であり、万博協会の副会長を務める松本正義氏(住友電工会長)は、今年4月の記者会見で万博の来場者数について、「来場者が1500万人しか来なかったら失敗と言われる。2820万人来たらOK、それ以上だったら、ようやったなと評価されるだろう」と述べていた。現状の推移を見る限り、目標値である2820万人には遠く及ばず、「OK」の評価すら危うい状況となっている。
結論
大阪・関西万博は、運営費の面では入場券収入による黒字化を達成し、追加的な税金投入を回避できる見通しとなった。特に「夏パス」の成功は、夏の期間の集客に大きく寄与した。一方で、総来場者数については当初の目標2820万人には届かないことが確実視されており、万博全体の「成功」という評価に影を落とす可能性が指摘されている。閉幕に向けて、今後の来場者数の推移と最終的な評価が注視される。