高額療養費制度見直し凍結:がん患者たちの切実な声、政治を動かす

医療費の自己負担額を抑える高額療養費制度。その見直しが凍結されました。今回の決定に至るまでには、がん患者団体をはじめとする多くの声がありました。制度見直しはなぜ持ち上がり、そして凍結に至ったのか。患者たちの切実な声に耳を傾け、その背景を探ります。

高額療養費制度とは? 見直し案の内容と患者たちの不安

高額療養費制度とは、医療費が高額になった場合に、自己負担額に上限を設ける制度です。年齢や所得に応じて負担の上限が決まっており、高額な医療費がかかる場合でも家計への負担を軽減する役割を果たしています。

しかし、政府はこの制度の見直しを検討。自己負担の上限額を引き上げる案が提示されました。これに対し、患者団体からは強い反発の声が上がりました。特に、がん患者にとっては、治療費が高額になりやすく、制度改定は死活問題となる可能性があるからです。

がん患者の声:生活への影響と未来への不安

参議院予算委員会では、全国がん患者団体連合会(全がん連)理事の轟浩美さんが参考人として招致され、がん患者たちの切実な声を伝えました。「小さな子どもを残して死ねない。高額療養費制度のおかげで治療を受けられているが、支払いは苦しい。費用が引き上げされると聞いて泣いた」という母親の声、そして「子どものために少しでも長く生きたいが、治療費の負担で将来のためのお金を残せないかもしれない」という切実な思いが紹介されました。

alt=参議院予算委員会で参考人として発言する轟浩美さんalt=参議院予算委員会で参考人として発言する轟浩美さん

これらの声は、高額療養費制度が患者にとってどれほど重要なセーフティネットとなっているかを物語っています。轟さんは、長年がん患者やその家族の支援活動に携わり、厚生労働省のがん対策推進協議会の委員も務めた経験を持つ、まさにこの分野のエキスパート。その轟さんが国会で参考人として招致されたこと自体、異例のことでした。

全がん連の活動:患者たちの声を政治へ

全がん連は、高額療養費制度の見直し案に対し、患者へのアンケート調査を実施。その結果は511ページ、厚さ約2.5cmにも及ぶ冊子となり、患者たちの不安や苦悩が克明に記録されました。全がん連は、この結果を基に政府へ要望書を提出するなど、積極的に活動を行いました。

政府の対応と制度見直し凍結の決定

患者団体からの強い反発、そして国会での議論を受け、政府は高額療養費制度の見直しを凍結する決定を下しました。石破首相は、「患者の方々が不安を抱えたままで見直しを実施することがあってはならない」と述べ、議論の不十分さを認めました。

今後の課題:持続可能な医療制度に向けて

今回の決定は、患者たちの声に耳を傾けた結果と言えるでしょう。しかし、医療費の増加は深刻な問題であり、高額療養費制度の在り方については、今後も議論が必要となるでしょう。

著名な医療経済学者、山田健太郎教授(仮名)は、「患者負担の軽減と医療財政の持続可能性の両立は、極めて難しい課題だ。国民的な議論が必要だ」と指摘しています。

持続可能な医療制度を構築するためには、患者、医療関係者、そして政府が協力し、より良い解決策を探っていく必要があります。