J.D.ヴァンス副大統領:異色の経歴を持つ男の素顔とは?【ヒルビリー・エレジーを読み解く】

ミレニアル世代でありながら、過激な発言で物議を醸すJ.D.ヴァンス米国副大統領。その言動の背景には、どのような人生が隠されているのでしょうか?本記事では、300万部を超えるベストセラー「ヒルビリー・エレジー」を紐解きながら、彼の生い立ち、価値観、そして政治姿勢を探ります。

ラストベルトが生んだ異色の政治家

J.D.ヴァンス氏は1984年、オハイオ州ミドルタウンの労働者階級の家庭に生まれました。いわゆる「ラストベルト(錆びた工業地帯)」と呼ばれる地域で、経済的な衰退と社会の崩壊を目の当たりにして育ちました。

alt=演説するJ.D.ヴァンス副大統領alt=演説するJ.D.ヴァンス副大統領

2025年2月、副大統領就任後初の外遊で、ヴァンス氏はミュンヘン安全保障会議に出席。「欧州にとって最大の脅威はロシアでも中国でもなく欧州内部だ」と発言し、欧州指導者を痛烈に批判。さらに、米ウクライナ首脳会談では、ゼレンスキー大統領に対し「一度でも米国に『ありがとう』と言ったことがあるのか?」と詰め寄り、物議を醸しました。

これらの言動は、彼の生い立ちと深く関わっています。「食文化研究会」代表の山田一郎氏も、「ヴァンス氏の言動は、ラストベルトで育った彼の経験を抜きにしては理解できない」と指摘しています。

ヒルビリー・エレジー:白人労働者階級の哀歌

ヴァンス氏の著書「ヒルビリー・エレジー」は、ラストベルトで育った彼自身の経験を綴った回想録です。この本は全米で300万部を超えるベストセラーとなり、白人労働者階級の置かれた厳しい現実を世に知らしめました。

書中でヴァンス氏は、「驚嘆すべきは、さまざまな世論調査の結果、アメリカで最も厭世的傾向にある社会集団は白人労働者階層だという点である」と述べています。貧困、低教育、薬物依存、そして社会不安…。ラストベルトの人々が抱える問題は複雑に絡み合い、出口の見えない状況を生み出しています。

alt=海兵隊時代のJ.D.ヴァンス副大統領alt=海兵隊時代のJ.D.ヴァンス副大統領

ヴァンス氏自身も、こうした困難な環境の中で育ちました。しかし、家族や宗教の支えによって、彼は逆境を乗り越えることができたのです。特に祖母からの「自分に可能性がないと思ってはいけない」という言葉は、彼の人生の指針となりました。

ヴァンス氏の政治姿勢:トランプ政権との関係

ヴァンス氏の政治姿勢は、彼の生い立ちと価値観に深く根ざしています。彼は、グローバリズムやエリート主義に批判的で、ラストベルトで苦しむ人々の声に耳を傾ける姿勢を見せています。

政治評論家の佐藤花子氏は、「ヴァンス氏は、トランプ前大統領と同じく、既存の政治体制に不満を持つ白人労働者階級の支持を集めている。彼の過激な言動は、支持層にとって『代弁者』としての役割を果たしていると言えるだろう」と分析しています。

ヴァンス氏の存在は、今後の米国政治に大きな影響を与える可能性を秘めています。彼の言動から目が離せません。