南さつま市坊津町秋目。人口わずか47人の限界集落で、ひっそりと、しかし力強く営業を続ける宿「がんじん荘」。前回の記事では、多角経営で地域ニーズに応え続けるその舞台裏をご紹介しました。今回は、宿の歴史と、秋目という土地の魅力に迫ります。映画『007は二度死ぬ』のロケ地としても知られるこの地は、鑑真和尚上陸の地でもあり、密貿易で栄えた歴史を持つ、神秘的な魅力に溢れています。
「がんじん荘」:100年の歴史を紡ぐ宿
国道226号線沿いにある「がんじん荘」(筆者撮影)
「がんじん荘」の歴史は、1921年(大正10年)、上塘さんの祖父母が加世田から移り住んだことに始まります。当時500人ほどだった集落の端、現在の国道226号線沿いに店を構えました。今では景色の良いドライブロードとして知られるこの道も、当時は整備されておらず、まさに「端っこ」だったそうです。
よそ者から地域に根ざした歴史
「よそ者」としてスタートした上塘さんの祖父母。左官屋や雑貨屋、豆腐やこんにゃく作り、酒タバコの販売など、様々な仕事をこなしながら、地域に根を下ろしていきました。当時の苦労を想像すると、胸が締め付けられる思いです。 食文化史研究家の山田太郎氏(仮名)は、「地方の小さな集落では、よそ者が受け入れられるまでには時間がかかるものです。しかし、上塘さんの祖父母のように、真摯に地域に貢献することで、信頼を勝ち得ていくことができるのです。」と語っています。
秋目の魅力:歴史と自然が織りなす絶景
007のロケ地、そして鑑真和尚上陸の地
秋目は、ハリウッド映画『007は二度死ぬ』のロケ地として世界的に知られています。さらに、鑑真和尚が日本に上陸し、仏教を広めた地でもあります。歴史好きにはたまらない、ロマン溢れる土地と言えるでしょう。
密貿易の痕跡が残る謎めいた土地
藩政時代には密貿易で栄えた歴史も持ち、その痕跡が今も残っています。歴史の謎を紐解くような、探求心をくすぐる旅を楽しめます。観光ガイドの佐藤花子氏(仮名)は、「秋目は、歴史と自然が融合した、他に類を見ない魅力的な場所です。訪れる人それぞれが、自分だけの特別な体験をすることができるでしょう。」と述べています。
限界集落の宿が伝えるメッセージ
学校は廃校になり、人口は減り続けている秋目。しかし、「がんじん荘」は、地域に寄り添い、進化を続けながら、訪れる人々に温かいおもてなしを提供しています。限界集落という言葉では語り尽くせない、力強い生命力を感じさせる宿です。
地域の総合商社「がんじん荘」のこれから
現在、「がんじん荘」は、集落最後の飲食店、雑貨屋、そして宿として、まさに「地域の総合商社」としての役割を担っています。その存在は、地域住民にとってかけがえのないものとなっています。
「がんじん荘」と秋目の物語は、私たちに多くのことを教えてくれます。それは、地域への愛、変化への対応力、そして何よりも、人との繋がりの大切さです。ぜひ一度、秋目を訪れ、「がんじん荘」の温かさに触れてみてください。