近年、日本企業の初任給が上昇傾向にあり、30万円を超える企業も珍しくなくなってきました。かつては同業他社と横並びで決められていた初任給ですが、人手不足を背景に、この常識が崩れ始めています。この変化は、日本型雇用慣行である長期雇用や年功序列賃金にも大きな影響を与える可能性を秘めています。本記事では、変化する初任給の実態と、転職市場への影響について詳しく解説します。
横並びから変化?上昇する日本の初任給
従来、日本の初任給は企業間で横並びの傾向が強く見られました。同規模・同業種の企業で働く大卒新卒男性の給与のばらつきを調べると、その差はわずかであることが分かります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和4年)を参考にすると、この傾向は統計データからも読み取ることができます。
東京都千代田区・丸の内のオフィス街を歩く若い会社員ら
しかし、近年の人材不足を背景に、この状況は変化しつつあります。優秀な人材を確保するために、初任給を引き上げる企業が増加しているのです。特にIT業界や金融業界などでは、この傾向が顕著に見られます。
なぜ初任給は横並びだったのか?その背景を探る
では、なぜこれまで日本の初任給は横並びだったのでしょうか?その背景には、日本型雇用慣行と企業間の協調関係があったと考えられます。
長期雇用と年功序列賃金の影響
日本企業は伝統的に、長期雇用と年功序列賃金を前提とした人事制度を構築してきました。初任給は低く設定される一方、勤続年数に応じて賃金が上昇していく仕組みです。人事コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「企業は初任給を抑制することで、長期的な人件費のバランスを保っていた」と指摘します。
キャリアに伴う所定内給与のばらつき(2023年)
企業間の協調関係
また、企業間では、賃金に関する情報交換が活発に行われてきました。これは、過度な競争を避け、一定の賃金水準を維持することを目的としていたと考えられます。
初任給上昇が転職市場に与える影響
初任給の上昇は、転職市場にも大きな影響を与えると予想されます。
若手人材の流動化
高い初任給を提示する企業が増えることで、若手人材の流動化が加速する可能性があります。従来の日本企業は、新卒一括採用を重視し、中途採用には消極的な傾向がありました。しかし、優秀な人材を確保するために、中途採用を強化する企業が増えていくでしょう。
経験者採用の活性化
初任給の上昇は、経験者採用にも影響を与えます。企業は、経験者に対しても、市場価値に応じた適切な賃金を提示する必要が出てきます。
まとめ:変化の時代におけるキャリア戦略
初任給の上昇は、日本の雇用慣行に大きな変化をもたらしつつあります。若手人材にとっては、より多くの選択肢の中からキャリアを選択できる時代が到来しています。一方、企業は、優秀な人材を確保するために、従来の人事戦略を見直す必要に迫られています。常に変化する市場動向を把握し、自身のキャリアプランを柔軟に設計していくことが重要となるでしょう。