【ロンドン=板東和正】12月12日の英総選挙まで1カ月を切り、与野党が各地で選挙運動を続けている。選挙運動では、ジョンソン首相率いる与党・保守党が欧州連合(EU)と合意した離脱協定案での離脱を訴える一方、最大野党・労働党は医療問題の改善を強調。各政党が公約を相次いで発表する中、立候補の受け付けが14日午後に締め切られ、選挙戦の構図が固まる。
ジョンソン氏は13日、英中部コベントリーの自動車工場で演説し、離脱問題が膠着することで「企業の設備投資などの判断が遅れている」と指摘した。
「政治や経済にとって最良の結果を生むために、離脱を実現させなければならない」とした上で「保守党が総選挙で過半数の議席を獲得できれば、離脱問題を解決できる」と主張した。 第二次大戦後に自動車産業が栄えたコベントリーは近年、産業が衰退し、雇用の低迷が指摘されている。EUを離脱すれば、米国やアジアと自由な貿易ができ、産業が再び活性化すると考える市民が多いとされ、2016年の国民投票で半分以上の住民が離脱に賛成した。
一方、労働党は13日、NHS(英国の国民保健サービス)の予算を260億ポンド(約3兆6300億円)拡大し、追加職員採用や設備刷新などを進める公約を発表した。
NHSは原則、患者の負担なしで医療を受診できる英国の国営医療制度。NHSをめぐっては、政府予算の削減が社会問題となっており、有権者の関心を集めていた。英メディアによると、労働党は、NHSを総選挙の公約の中核に据える方針という。選挙活動が開始してから、有権者の関心は各政党の離脱方針だけでなく、医療や移民問題などの他の政策にも広がっている。
総選挙をめぐっては、14日中に選挙区ごとの候補者名が発表され、選挙戦の構図が判明する見通し。
すでに、一部の現職議員が出馬取りやめを表明しており、保守党ではニッキー・モーガン文化相や、ジョンソン氏の弟のジョー・ジョンソン氏らが再選を狙わない方針を発表した。
労働党からも、同党の副党首を務めたEU残留派として知られるトム・ワトソン氏が不出馬を宣言し、党内で衝撃が走った。離脱派と残留派で分裂する労働党の党内分裂が原因ともいわれている。