三菱自動車が、台湾の電子機器大手ホンハイにEVの生産委託を検討している。ホンダと日産自動車の統合が破談し、三菱自も生き残りの道を模索する中、強かったASEAN市場では中国勢の勢いに負けてシェアを落としている。ホンハイは三菱自の製造技術の吸収を重視しているはずだ。今後、ホンハイが三菱自の買収を目指す可能性もあるだろう。わが国の製造技術が海外流出するリスクも否定できないが、どうすればいいのか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
● 三菱自動車とホンハイの協業は 日本の産業で重要な試金石に
自動車産業は100年に一度の大変革期に差し掛かっている。電気自動車(EV)への転換や、自動車のソフトウエア化(SDV)への動きは、まさに日進月歩の感がある。それに伴い、異業種を含めた構造変化が起きている。
これまで世界のトップに立ってきた、わが国の自動車業界もそうした荒波に巻き込まれている。日産自動車とホンダの統合構想が頓挫する一方で、三菱自動車が台湾の電子機器受託製造業、鴻海精密工業(ホンハイ)にEVの生産を委託するという。実現すれば、日本で初めてEV生産を他社に委託するケースになる。
EV部門では中国勢の台頭が顕著で、比亜迪(BYD)が世界のEV市場を席巻する勢いだ。米国では、GMとフォードが韓国企業との関係を重視し、電動化やトランプ政権の関税リスクへの対応を急いでいる。欧州の大手メーカーは、運営体制を立て直して中国勢に対抗しようとしているが、今のところ状況はかなり厳しい。
日本の自動車業界は、製造技術を磨いて垂直統合のビジネスモデルを確立してきた。しかし足元では、電動化やSDVへの潮流で、水平分業の波が押し寄せている。いかに変化に対応し、生き残るか――。三菱自動車とホンハイの協業は、重要な試金石になるだろう。
● GMとフォードはEV分野でリストラ 韓国勢との提携で体制立て直しか
世界の自動車産業を俯瞰すると、一大市場である中国では電動化、SDV開発に向けた競争が激化。BYDは、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)分野でシェアを伸ばしている。
中国政府の産業補助金や、新エネルギー車買い替え補助金が、BYDなどの急成長や関連企業を大きく押し上げている。車載用バッテリー分野では、世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)、関連部材メーカーの上海エナジーが急成長中。主要先進国や韓国企業とのシェアの差が拡大傾向にある。
中国企業は、米国の対中関税に直接関係のない地域に積極的に進出している。また、ハンガリーやスペインなど欧州市場にも進出し、世界シェアを伸ばした。さらに、華為技術(ファーウェイ)や小米(シャオミ)など異業種の新規参入も相次ぎ、自動車と最新デジタル技術の融合が加速している。
中国勢の台頭に対して、米欧の大手企業は劣勢に立たされている。米国では、テスラの業績を不安視する見方が増えている。中国勢との価格競争の激化に加え、活発な政治活動を行うイーロン・マスク氏に対する懸念も打撃になった。
GMとフォードは、EV分野でリストラをした。GMは、韓国のヒョンデ自動車と次世代車の提携を協議中と報じられている。GMはホンダとの小型EV、自動運転分野での提携を解消したばかり。フォードは、韓国バッテリーメーカーのSKオンと組んで車載用バッテリーの生産体制確立を急いでいる。
現在、欧州勢の業況はかなり厳しい。EVを重視した事業戦略の失敗、ウクライナ戦争によるエネルギーコスト上昇、インフレの影響で労使関係が不安定化しているからだ。フォルクスワーゲンやステランティス、仏ルノーの収益力は低下傾向にある。
これまで中国の自動車企業にとって、ドイツの自動車関連企業はお手本のような存在だっただろう。ところが、状況は一変。ドイツの自動車メーカーは自国でリストラを実施し、中国企業との連携を急ぐ状況に追い込まれている。それほど中国勢の台頭は急速だ。