妊娠前の気温環境が、生まれてくる子どもの成人後の肥満リスクに影響を与えるという、驚くべき研究結果が東北大学大学院医学系研究科などの研究チームによって発表されました。jp24h.comでは、この研究の詳しい内容と、私たちの生活への影響について分かりやすく解説します。
受精時の気温と褐色脂肪の関係
寒い時期の受精で肥満になりにくい?
研究チームは、代謝に関わる褐色脂肪「BAT」に着目しました。BATは熱産生やエネルギー消費の調整を担っており、その活性が高いほど肥満リスクが低いことが知られています。18~29歳の健康な男性356人を対象にした研究では、受精時期が寒い期間(10月17日~4月15日)だった人は、暖かい期間(4月16日~10月16日)に比べてBATの活性が1.3倍も高かったのです。
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この結果は、20~78歳の男女286人を対象とした研究でも同様に見られました。寒い時期に受精したグループは、BATの活性に加え、食後の発熱量や総エネルギー消費量も高い値を示したのです。
寒暖差も重要な要素
さらに、受精時期の気象状況を分析した結果、外気温が低いだけでなく、1日の寒暖差が大きいほどBATの活性化が高まることも明らかになりました。
マウス実験でも同様の結果
実は、マウスを使った先行研究でも、精子の段階での気温環境が成長後の肥満リスクに関係することが示されていました。今回の研究は、人間においても妊娠後ではなく、受精前~受精時期の気温環境が成人後のBATの活性度合いを決定づけることを示唆しています。
今後の研究と生活習慣病予防への期待
更なる研究の必要性
今回の研究は日本在住の日本人で行われたため、今後、より広範な地域・人種での研究が必要です。しかし、この研究結果は、生活習慣病予防の新たな可能性を示唆しています。
父親の役割にも注目
東北大学大学院の米代武司准教授は、「父親も母親と共に、自身の生活環境が子の健康に影響を与える可能性がある。例えば夏でも父親が寒暖差を意識することで子の肥満リスクを下げられる可能性がある」と述べています。
まとめ:未来の健康は受精時から?
今回の研究は、受精時の気温環境が将来の肥満リスクに影響を与える可能性を示しました。 親世代の生活環境が子どもの健康に大きく関わっているという、新たな視点を与えてくれる研究と言えるでしょう。