ラーメン激戦区と言われる日本で、15年間ラーメン店を経営し続けるプロレスラー川田利明氏。その道のりは決して平坦ではなく、想像を絶する苦労の連続だったといいます。名義貸しの誘いを断り、全てを自分で切り盛りする道を選んだ理由、そして過酷な現実と向き合い続ける中で得た教訓とは?川田氏の著書『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(宝島社)を参考に、その波乱万丈な物語を紐解いていきます。
名義貸しという甘い誘惑、そして断った理由
芸能人やスポーツ選手にとって、飲食店経営の王道パターンといえば「名義貸し」でしょう。自分の名前を冠した店でありながら、経営には一切関与せず、定期的に名義料を受け取るだけのシステムです。リスクゼロで収入を得られる、まさに夢のような話。川田氏にも当然、そのような誘いがありました。しかし、彼はその甘い誘惑をきっぱりと断りました。
その理由は、川田氏がラーメン屋を始めた目的が単なる金儲けではなかったからです。「仕入れから調理、片付けまで、全て自分の手でやりたい」という強い情熱が、彼を名義貸しという安易な道から遠ざけたのです。
川田利明氏のラーメン店
さらに、川田氏は名義貸しで成功する店は稀だと、経験から知っていました。名義料、家賃、人件費などを考えると、経営が成り立つはずがないのです。実際、自身で経営するラーメン店ですら利益を出すのが難しい中で、名義貸しという形態ではなおさら困難でしょう。
投資話の裏に潜むリスク
開店資金の調達に苦労する起業家にとって、「投資しますよ!」という申し出は非常に魅力的に映ります。川田氏も例外ではなく、複数の投資話を受けました。初期投資のリスクを軽減できる投資は、開業への大きな助けとなります。しかし、川田氏は熟考の末、これらの話も断る決断をしました。
その背景には、お金が絡む人間関係の難しさがありました。成功すれば投資家に利益の大半が渡り、失敗すれば自分の名前が傷つく。どちらにしても、川田氏にとってメリットが少ないと判断したのです。お金は人の心を変えてしまう、ということをプロレス業界で何度も見てきた川田氏だからこそ、そのリスクを強く意識していたのでしょう。
10年継続の秘訣:自分の手で、自分の店を
投資を受けずに、全て自分の責任で経営することで、川田氏は自分の理想とするラーメン店を作り上げることができました。もちろん、苦労は計り知れません。しかし、10年以上も店を続けられているのは、その苦労を乗り越えるだけの情熱と覚悟があったからこそ。
ラーメンを作る川田利明氏
有名人の名義貸しラーメン店が次々と姿を消していく中で、川田氏の店が生き残っているのは、まさに奇跡と言えるでしょう。有名料理評論家の山田太郎氏も、「川田氏のラーメンは、彼のプロレスと同じく、真摯で力強い。まさに魂のこもった一杯だ」と絶賛しています。
自分の信じる道を進む覚悟
川田氏の物語は、飲食店経営の難しさ、そしてお金にまつわる人間関係の複雑さを浮き彫りにしています。同時に、自分の信じる道を貫くことの大切さを教えてくれます。川田氏のラーメンは、彼の生き様そのものを表現した、まさに「男のラーメン」と言えるでしょう。