郵便局長たちの過酷な選挙活動の実態:組織的圧力と違法行為の疑い

郵便局長による組織的な選挙活動の実態について、西日本新聞記者・宮崎拓朗氏の著書『ブラック郵便局』を基に深く掘り下げます。日常業務に加え、過酷なノルマとプレッシャーの中で行われる選挙活動の実態とは? 違法行為の疑いについても検証し、その闇に迫ります。

選挙活動スケジュールとマニュアルの存在

関東地方の小規模郵便局の局長Cさんの証言によると、局長会は綿密な選挙活動スケジュールとマニュアルに基づき、組織的に選挙活動を行っているとのことです。局長会は、局長たちの労働組合的な組織であり、自分たちの代表を国会に送り込むことを目的としています。Cさんはこの活動自体は否定しないものの、その活動の過酷さと行き過ぎた実態を告発しています。

関東地方局長会が作成した「後援会活動のスケジュール」関東地方局長会が作成した「後援会活動のスケジュール」

2018年秋から2019年夏の参議院選挙に向けた「後援会活動のスケジュール」には、後援会入会活動の開始から期日前投票の取り組み、票読み、票固めまで、具体的な活動内容が細かく記載されていました。

全国郵便局長会は政治活動にも力を入れている。全国郵便局長会は政治活動にも力を入れている。

属性別対応マニュアルと警察の捜査への警戒

後援会入会勧誘のための「話法集」も存在し、相手によって対応を変えるよう指示されていました。例えば、郵便局OBには低姿勢で、局員には職場を守るために必要だと強調するといった具合です。さらに、支持政党がない相手には自民党からの立候補であることを伏せ、公明党や共産党支持者にはすぐに引き上げるよう指示されていました。

驚くべきことに、警察の捜査への警戒も徹底されており、「会合後の会食を見張られている」「飲食の禁止もしくは割り勘の徹底」といった指示が出されていました。Cさんは「末端の局長が捕まったらトカゲのしっぽ切りにされる」と危機感を募らせていました。

選挙違反の疑い:事前運動の指示とビラの配布

関東地方局長会の理事が公職選挙法違反の疑いのある事前運動を促す発言をしていた音声記録も存在します。また、福岡市内の局長が後援会員向けに特定候補への投票を呼びかけるビラを配布していた事例も明らかになりました。これらの事例は、組織的な選挙違反の可能性を示唆しています。

取材への対応と情報提供元の詮索

これらの疑惑について、関係者への取材を試みましたが、日本郵便広報は「会社業務とは無関係」と回答し、郵便局長会側は回答を拒否しました。さらに、ビラを配布した局長は取材に対し、「実際には配っていない」と釈明した上で、情報提供元を詮索するような発言をしました。

これらの対応は、組織ぐるみで問題を隠蔽しようとする姿勢を示しているように見えます。 公正な選挙を守るためにも、徹底的な調査と真相究明が求められます。