【香港=藤本欣也】香港駐留の中国人民解放軍が抗議デモの本格化後初めて、駐屯地の外へ出動したことが波紋を広げている。特殊部隊が香港に駐留していたことも判明、民主派勢力は警戒感を募らせている。
16日夕、Tシャツと短パン姿の解放軍の軍人ら約100人が隊列を組んで、九竜地区の駐屯地を出発。近くの道路で約40分間、レンガを除去するなどの清掃活動に当たった。
解放軍が駐屯地の外で活動するのは異例で、駐留を始めた1997年以降、台風被害で樹木を撤去した昨年10月の活動しかない。デモが激化する中、解放軍の武力介入説がくすぶり続けているだけに、香港メディアは「解放軍は銃ではなく、ほうきを手に現れた」と驚きをもって伝えた。
香港基本法や駐軍法によれば、駐留する解放軍は香港政府の要請を受けて、治安維持や災害援助のために出動できる。しかし今回、香港政府は「出動を要請していない」と表明。清掃活動に当たった解放軍の軍人も香港メディアに、「自発的な行為だ」と述べた。
これに対し、民主派の立法会(議会)議員24人は16日、「解放軍の出動は違法行為だ」と非難する声明を発表した。「解放軍の出動を市民に慣れさせ、軍の活動を合理化していく意図がある」と指摘。今後、「自発的な出動」が増えることに警戒感を示した。
一方の親中派勢力は「今回の清掃活動はボランティアであり、軍事行為ではない。違法にはならない」(基本法委員会の譚恵珠副主任)と反論している。
また、清掃活動を行った軍人の中に、「雪楓特戦営」と記されたシャツを着たメンバーたちがいたことも注目されている。対テロなどを専門とする解放軍の精鋭部隊だ。香港駐留が初めて確認され、その目的に関心が集まっている。
香港では17日も抗議活動が続き、九竜地区にある香港理工大周辺でデモ隊と警官隊が激しく衝突した。催涙弾を撃ち込む警官隊に対し、若者らは火炎瓶を投げたり、弓で矢を放ったりして抵抗。警官が脚に矢を受けて負傷した。