現代社会を支えるスマートフォン、電気自動車、さらには最先端の戦闘機まで、様々な製品に欠かせないレアアース。その供給をほぼ独占する中国が、経済的・政治的な影響力を強めている現状を紐解きます。
レアアースとは？その重要性
レアアースは17種類の元素の総称で、その希少性と現代テクノロジーへの必要不可欠性から「産業のビタミン」とも呼ばれています。スマートフォンや電気自動車のバッテリー、風力タービンのモーター、医療機器、そして軍事技術に至るまで、幅広い分野で活用されています。これらの製品の高性能化、小型化、軽量化にはレアアースが不可欠であり、私たちの生活にも深く関わっています。
レアアースの用途
中国のレアアース戦略：経済と政治の舞台で
2019年、習近平国家主席はレアアース工場を視察し、その重要性を改めて強調しました。これは、レアアースを戦略物資として認識し、その支配権を確保することで国際社会における影響力を高めるという中国の戦略を示すものです。
実際、中国は世界のレアアース生産の7割以上を占めており、その供給網をコントロールすることで、他国への圧力、ひいては国際政治の駆け引きにおける強力な武器として活用できる可能性があります。 東京大学経済学部の山田教授（仮名）は、「中国はレアアースを経済的・政治的レバレッジとして利用し、国際社会での影響力を拡大しようとしている」と指摘しています。
米中貿易摩擦とレアアース：新たな火種
米中貿易摩擦の激化に伴い、中国はレアアースの輸出制限を強化する動きを見せています。これは、米国への牽制、そして自国の産業保護を目的とした措置と見られています。レアアースの供給不安は、世界の経済活動に大きな影響を与える可能性があり、国際社会の注目を集めています。
世界の対応：供給網 diversification の模索
中国のレアアース戦略に対抗するため、各国は供給網の多様化を模索しています。米国では国内でのレアアース生産の拡大、リサイクル技術の開発、そして同盟国との連携強化などが進められています。
レアアース鉱山
しかし、レアアースの採掘から精製までには高度な技術と莫大な投資が必要であり、短期間での供給網の再構築は容易ではありません。 専門家の中には、「中国への依存からの脱却には、国際的な協力と長期的な戦略が不可欠だ」と警鐘を鳴らす声もあります。
未来への展望：持続可能なレアアース戦略
レアアースは、持続可能な社会の実現にも欠かせない資源です。その安定供給を確保するためには、国際的な協調体制の構築、リサイクル技術の向上、そして代替材料の開発など、多角的な取り組みが求められています。 レアアースをめぐる国際的な競争は激化していますが、同時に、持続可能な利用に向けた国際協力の必要性も高まっています。
