日本駆け込み寺に東京都が助成金返還要求 元役員逮捕で活動継続の危機

東京都が公益社団法人「日本駆け込み寺」に対し、助成金の返還を要求した。この団体は新宿・歌舞伎町を拠点に、トー横キッズなどが抱える様々な問題(DV、多重債務、ストーカーなど)の相談に乗り、支援を行ってきた。今回の返還要求は、元事務局長の逮捕を受けたもので、団体は活動継続の危機に直面している。代表理事の清水葵氏も厳しい現状を語っていた。

日本駆け込み寺 代表理事 清水葵氏日本駆け込み寺 代表理事 清水葵氏

元事務局長逮捕と団体への衝撃

問題の発端は今年5月、日本駆け込み寺の元事務局長である田中芳秀被告がコカイン所持・使用容疑で逮捕されたことだ。さらに、相談者であった20代女性も元事務局長からコカイン使用を勧められ、逮捕される事態となった。

この事態に対し、代表理事の清水氏は「まさか、まさかだ。言葉にならない」と驚きを隠せなかった。創設者の玄秀盛元代表も「青天の霹靂…終わったなと。これで駆け込み寺は」と、団体の存続への絶望感を口にしていた。団体は2025年6月上旬の時点で、財政的に逼迫しており、資金繰りに必死だったという。

東京都による助成金交付決定の取消と返還要求

日本駆け込み寺はこれまで、東京都と新宿区から合計約3000万円規模の助成金を受けていた。東京都の担当者は当初、調査中としつつも、後に補助金交付決定を取り消すことを決定した。

東京都は、2024年度にすでに交付した約2194万円に加え、2023年度の取り消し分約161万円を合わせ、総額約2355万円の返還を求めている。「事業内容に不適正な事実が確認されたため」というのが、東京都の説明だ。東京都は、元事務局長の行為が組織的なものと見なしている可能性がある。

団体側の不服と根拠の不明確さ

清水代表は、過去に交付済みの助成金までさかのぼって返還を求めるのは事前の取り決めにはなかったと指摘する。さらに7月11日には、「東京都からは、額面の根拠を提示してもらえなかった。こちらが毎日、業務日報や支援記録などを全て残して資料を提出していたが、それでも東京都が根拠的資料も出してくれなかったのは、ちょっと不服だ」と、東京都の対応への不満を表明した。

返還不能の場合の法的・行政的影響

助成金が返還できない場合、どうなるのか。AZ MORE国際法律事務所 大阪事務所の中川みち子弁護士は、事例が少ないとしつつも、助成金の返還債務が返せない場合、債権者からの差し押さえや、最終的な事業継続不能による清算・破産手続きの可能性を示唆した。

さらに“最悪のケース”として、公益社団法人としての公益認定を取り消される可能性に言及。これが取り消されると、寄付金への税金優遇がなくなり、寄付が集まりにくくなるため、事業自体の継続が困難になる可能性がある。実際に2014年には全日本テコンドー協会が運営や会計処理の問題で公益認定を返上し、一般社団法人として活動するも、従来の活動が困難になった事例がある。内閣府も日本駆け込み寺に対し、7月31日までに是正措置を書面提出しなければ公益認定を取り消す可能性を示唆している。

創設者の苦悩と元都知事の見解

創設者の玄氏は「一銭も払えない。延滞が14%つくらしいが、払える根拠が全くない。家賃滞納すれば一気に(現事務所を)出される」と窮状を訴えた。一方で、「本当に駆け込み寺、辞めちゃうんですか?」「辞めないで」といった活動継続を望む声が多数寄せられていることも明かした。

この問題について、元東京都知事の舛添要一氏は、「(元事務局長が)相談を受けていた女性にもコカインを勧めたという、これは組織としてやったことに個々で解釈されている」と、個人の問題ではなく組織の問題と見なされている点を指摘。東京都の対応については「東京都の役人も保身と言ったら悪いが、世間から叩かれるのが一番嫌だから、止めることで叩かれない」と、批判回避の側面があるとの見方を示した。

しかし、過去にさかのぼっての返還要求については、「根拠が非常に曖昧。逮捕されたのは5月。2023年度もそういうことをやっていたのかどうなのか。もう少し情報は公開すべきだ」と批判的な見解を述べ、東京都の情報公開の不足を指摘した。

結論

日本駆け込み寺を巡る東京都からの助成金返還要求は、元役員の不祥事が引き金となった活動継続の危機を浮き彫りにしている。団体側は返還根拠の不明確さを訴えており、問題の解決策、特に過去分の助成金返還に関する先例の少なさから、今後の行方は不透明な状況が続いている。公益認定の行方を含め、団体の支援活動がどうなるのかが注目される。

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