古き良き下町の風情が残る、日本で2番目に古い歴史を持つ東京・台東区の佐竹商店街。近年ではドラマのロケ地にもなり、活気を取り戻しつつあるこの商店街で、愛されているラーメン店「とりそば若松」が、4月末に閉店することになりました。突然の閉店に、常連客からは惜しむ声が上がっています。一体、何が起こったのでしょうか。
無添加・国産にこだわる「とりそば」の味
2020年に元浅草郵便局の隣から佐竹商店街に移転してきた「とりそば若松」。店主の大森政弘さんは、和食の経験とフグ調理師免許を持つ実力派。彼の作る看板メニュー「とりそば」は、無添加・国産食材にこだわり、冷凍物は一切使用しないという信念のもとで作られています。「とりそば定食」は、鶏ごはんと漬物がついて驚きの900円! 2020年の移転以来、この価格を維持してきたというから驚きです。
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上品で繊細なスープと、しっとりとした鶏肉のハーモニーは絶品。世代を問わず愛される優しい味わいは、まさに和食の料理人が生み出すラーメンと言えるでしょう。若鶏の唐揚げやだし巻き卵、茄子田楽など、一品料理も充実しており、夜にはお酒と共に食事を楽しむ人の姿も多く見られました。
突然の契約終了通知…店主の胸中は
人気の「とりそば若松」ですが、なぜ突然の閉店なのでしょうか? そこには、思いもよらない事情がありました。店主の大森さんに話を伺いました。
「実は、ビルのオーナーから契約更新を断られてしまい、4月末に店を畳むことになったんです。2025年7月までの5年契約で、その後も延長するつもりでいたのですが、1月に突然『契約更新はできません』という手紙が届いたんです。」
7月14日には退去しなければいけないとのことですが、閉店後の準備もあるため、4月末を区切りとしたそうです。契約終了の半年前の通知なので違法性はないものの、あまりにも突然の出来事に大森さんも驚きを隠せない様子でした。
「私もアパート経営の経験があるので、入居者の立場も理解しています。更新できないとなれば困るでしょう。だから、建て替えの際には保証金や引っ越し代をつけるのは当然のことだと思っていたのですが…」
話を聞くと、ビルのオーナーが中国人に変わっていたことが今回の出来事の発端だったようです。
閉店を惜しむ声、そして未来への希望
「とりそば若松」の閉店は、佐竹商店街にとって大きな痛手となるでしょう。常連客からは、「優しい味のとりそばがもう食べられないなんて…」「夜に気軽に立ち寄れる場所がなくなってしまう」と、閉店を惜しむ声が多数聞かれました。
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フードジャーナリストの山田太郎氏(仮名)は、「個人経営の飲食店にとって、物件の契約問題は常に大きなリスクです。今回の件は、佐竹商店街全体の活性化を考える上でも、重要な課題と言えるでしょう。」とコメントしています。
大森さんは、「突然の閉店となり、お客様には大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。いつかまた、どこかで皆様に美味しいとりそばを提供できればと思っています。」と、未来への希望を語っていました。
佐竹商店街の未来は?
「とりそば若松」の閉店は、佐竹商店街にとって大きな転換期となるかもしれません。商店街の活性化と、地域に根付いた飲食店の存続。この2つのバランスをどう取っていくのか、今後の動向に注目が集まります。