【香港=藤本欣也】香港理工大が警官隊に包囲された18日、付近の繁華街では若者たちがネットの呼び掛けなどに応じて集結し、“突入戦”や“市街戦”の準備に当たっていた。反政府デモが本格化してから5カ月以上が過ぎ、警察当局はデモを主導する学生らを一網打尽にする戦略だ。一方の若者たちは中高校生も参加した総力戦で抵抗を試みている。
「理大を救え!」。反政府デモを支援する若者ら市民の間では、このスローガンが合言葉になった。
香港理工大のキャンパスに近い繁華街、佐敦の交差点付近では午前中、石を砕く音が鳴り続けた。工事ではない。歩道のレンガをはがし、投石用に細かくする作業のためだ。
「警察に囲まれた学生たちは助けを待っている。早くしなければ…」。懸命にレンガを石で割っていた女性(35)は、会社を休んで駆けつけた。
「包囲された大学生たちに、僕たちができることは『勇気』を与えることだと思います。だから、何でもやるつもりです」
こう話した少年はまだ16歳の高校生だった。香港の小中高校は14日から休校で、少年も多数、街頭の抗議活動に参加していた。
地元のジャーナリストは「若者たちは、大学前に張られた警察の規制線を突破し救出活動を行う計画だ。激しい市街戦になるだろう」と話す。
「(15日まで攻防戦が行われた)中大(香港中文大)はエリート校なので卒業生に政財界の有力者が多い。その点、理大は違う。警察はやりたい放題だ」
18日、香港理工大から外に出たボランティアの医療メンバーらも拘束された。「暴動を支援したとの理由だ。信じられない。本当に警察はひどい」。14人の仲間が大学から戻ってこないという男性ボランティア(20)は憤った。
18日未明に大学を脱出し命からがら帰宅した女子高校生(17)は「催涙弾の嵐で本当に怖かった。まだ大学に3、400人残っていた。みんな遺書を書いていた」と話した。
「理大にゴキブリを殺しに行く。逃げるなよ、(1989年の)天安門事件を再現してやる」と叫ぶ警官とされる男の声もネットに出回り、市民たちのさらなる反発を買っている。