日本の大学入試を取り巻く環境は常に変化しており、推薦入試の増加が話題となっています。総合型選抜や学校推薦型選抜といった新しい推薦入試制度に注目が集まる中、実は最も多く利用されているのは、保護者世代にも馴染み深い指定校推薦です。この記事では、指定校推薦の現状と今後について詳しく解説します。
指定校推薦:意外と多い難関大学での利用
大手予備校の入試分析会などで、「早稲田大学は6割を総合型選抜にする」といった情報が流れることもありますが、これは誤解です。正しくは、推薦入試全体の割合が6割程度ということです。早稲田大学の場合、推薦入試の大半は系列校からの内部進学と指定校推薦であり、この傾向は今後も続くと予想されます。2024年度の早稲田大学の入学者数は9077人で、内部進学が1484人、指定校推薦が1563人、総合型選抜は1137人でした。つまり、推薦入学者の中で最も多いのは指定校推薦なのです。東京理科大学のように付属校を持たない大学では、指定校推薦の枠を多く設けています。
alt 早稲田大学の風景
2024年度の大学入学者数は61万3453人で、そのうち推薦入試での入学者は約51%、総合型選抜は9万8520人でした。実際には、推薦入試で入学する学生の多くは指定校推薦を利用しているのです。メディアでは総合型選抜の増加が取り沙汰されますが、現実はそれほど拡大していません。その理由の一つとして、総合型選抜は面接や小論文、書類審査など選考の手間がかかることが挙げられます。
指定校推薦増加の背景:大学と高校の信頼関係
アメリカの私立大学には入試専門の部署がありますが、日本の大学では教授が入試業務を担当することが多く、数百人規模の面接を行うのは現実的ではありません。一人ひとりを丁寧に評価する総合型選抜は理想的ですが、多くの学生を選抜するには負担が大きすぎます。
一方、指定校推薦では、選抜を実質的に高校が行います。例えば、偏差値40台前半の跡見学園や清泉女学院といった高校からも、慶應義塾大学などの難関大学への指定校推薦枠があります。これは、長年にわたり優秀な生徒を送り出し、大学入学後も好成績を収め、卒業後はきちんと就職しているという実績に基づく信頼関係があるからです。
alt 高校の教室
高校の進路指導担当者の中には、指定校推薦枠を確保するために生徒の評定平均値を高くつけるケースもあるようですが、大学側は入学後の成績などから高校の評価の信頼性を判断しています。もし不正が発覚すれば、指定校推薦枠は取り消される可能性もあります。そのため、高校は厳格な評価と選考を行い、優秀な生徒を大学に送り出す必要があります。
指定校推薦のメリットと今後の展望
指定校推薦は、高校にとっては生徒の進学を確保できる、大学にとっては選抜の手間を軽減できるというメリットがあります。文部科学省も推薦入試の拡大を推奨しているため、今後も指定校推薦の利用は増加すると考えられます。大学入試における指定校推薦の役割は、今後ますます重要になっていくでしょう。教育評論家の山田一郎氏(仮名)は、「指定校推薦は、大学と高校の信頼関係に基づいた制度であり、適切に運用されれば、双方にとって有益なシステムとなる」と述べています。