米国学生ビザの取消し、インド人学生に深刻な影響

米国での学生ビザの取消しが急増し、特にインド人学生への影響が深刻化しています。本記事では、この問題の背景、インド政府の対応、そして学生たちの現状について詳しく解説します。

なぜインド人学生が標的に?ビザ取消しの波紋

トランプ政権下で加速する留学生ビザの取消し。その矢面に立たされているのが、インド人学生です。米移民弁護士協会(AILA)の報告書によると、過去2ヶ月間に発生したビザおよび滞在資格の取消し事案のうち、なんと半数がインド出身の学生だったことが明らかになりました。中国出身者が14%で続くものの、インド人学生への影響の大きさが際立っています。

alt_textalt_textハーバード大学でビザ取消しに抗議する学生たち。将来への不安が募る。

トランプ政権は、イスラエルによるガザ地区への侵攻に抗議する運動に関連し、「反ユダヤ主義」に関与した留学生の滞在資格を取り消すと説明していますが、実際の基準は曖昧なままです。AILAの調査では、「政治的な抗議運動に関わった」と回答した学生はわずか2名。一方で、「警察の捜査対象になったことがある」と回答した学生は86%に上りますが、そのうち33%は違反行為が確認されていない、あるいは訴追もされていないケースも含まれています。さらに、違反行為の内容も軽微な交通違反などである場合が多く、ビザ取消しの妥当性には疑問の声が上がっています。

インド政府の対応と学生たちの不安

インドにとって、米国は留学生にとって最も人気の高い留学先の一つ。米国際教育研究所のデータによると、2023~24年度に米国の大学に在籍する外国人学生約113万人のうち、インド出身者は29.4%を占め、国別で最多となっています。今回のビザ取消しの急増は、インド政府にとっても大きな懸念事項となっています。

インド政府は外交ルートを通じて米側に懸念を表明。インド外務省報道官は、大使館等がビザに関する連絡を受けた学生と連絡を取り合い、サポートを提供していると発表しました。しかし、米当局は「取り消し措置は特定の国や地域を対象としたものではない」と説明し、インドが標的にされているとの見方を否定しています。

専門家の見解

国際教育コンサルタントの佐藤恵氏(仮名)は、「今回のビザ取消し問題は、学生たちの将来に深刻な影を落とす可能性がある」と指摘します。「留学は多大な費用と時間を要する投資です。ビザが取り消されれば、学生たちの努力が水の泡となり、精神的なダメージも計り知れません。」

今後の展望と学生への支援

ビザ取消しの問題は全米に広がりを見せており、AP通信によると、3月下旬以降、約160の大学で少なくとも1000人の学生ビザが取り消されたと報じられています。今後、さらに多くの学生が影響を受ける可能性も懸念されています。

インド政府は引き続き米側との協議を続け、学生への支援を強化していく方針です。また、大学側も学生へのサポート体制の整備を進めています。しかし、根本的な解決には、ビザ取消し基準の明確化と透明性の確保が不可欠です。