日本が主導し、オーストラリア、シンガポールなど、アジア太平洋地域の11カ国が参加した多国間の通商協定「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」が昨年12月に発効して間もなく1年となる。
世界の国内総生産(GDP)の13%を占め、域内人口が5億人を超える新たな経済圏が誕生した。このTPPを次のステップに進めるカギとして、日本政府は加盟国・地域の拡大に向けた「第2ラウンド」交渉への助走を始めている。そこで優先すべきは台湾だ。
外務省幹部は、「通商や投資、金融などを通じたアジア太平洋の経済安全保障上の考えからも、台湾の加盟支援を急ぎたい」と話している。台湾の蔡英文総統はかねて「米中貿易摩擦による不確実性への対処」としてTPP正式加盟への意欲を示し、日本に支援を求めてきた。台湾は独立した関税地域として世界貿易機関(WTO)に2002年に正式加盟ずみで、TPP参加資格も十分にある。
そもそもTPPは、覇権を強める中国に対する経済包囲網の側面も考えて設計された経緯がある。トランプ政権はTPP参加を見送ってはいるが、貿易摩擦で中国製品に高関税をかけており、「メード・イン・チャイナ」の行き場はどんどん狭められていく。中国から外資系の製造業撤退が今後、急速に進むだろう。
その受け皿として、ベトナムなどとともに台湾は有力な候補になる。台湾は人件費が高騰した中国とコスト面で差がなくなった。労働力は豊富で質も高く、港湾などインフラも整っており、「メード・イン・タイワン」が再び脚光を浴びる可能性がある。IT技術の情報漏れリスクや農産物の安全性なども、台湾に軍配が上がることは明白だ。