【北京=西見由章】香港のデモ参加者に覆面着用を禁じた「覆面禁止法」などが香港基本法(憲法に相当)に違反するとした香港高裁の判断について、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は19日の報道官談話で「香港の法律が香港基本法に違反していないか判断できるのは全人代常務委だけだ」と反発、「重大な懸念」を表明した。
香港高裁は18日、「覆面禁止法」を“違憲”と判断。同法制定の根拠で、緊急時には香港政府トップの行政長官が立法会の審議を経ずに必要規則を設けられるなどとする「緊急状況規則条例」についても、行政機関による立法権の侵害を指摘した。
これに先立ち、中国の韓正副首相は今月、林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官に対し、暴力の制止が「香港の行政、立法、司法機関の共同責任だ」として“三権一体”によるデモ抑え込みを要求していたが、香港の独立した司法によって阻まれた形だ。
全人代の談話は「一部の代表が強烈な不満を示している」とも言及しており、今後は中国側による香港司法機関への圧力が強まるとみられる。
共産党中央党校の謝春濤(しゃ・しゅんとう)副校長は19日、外国人記者らへの講演で「香港基本法は、その解釈権が全人代常務委にあると明確に規定している。(香港高裁などの)関係方面は越権行為に及んでいないか反省すべきだ」と述べた。中国国務院(政府)の香港マカオ事務弁公室も19日の報道官談話で、香港高裁の判断は「全人代常務委の権威と、法が(香港)行政長官に付与した統治権に公然と挑戦するものだ」と反発した。
国務院は19日、林鄭氏の指名に基づき、香港警察トップの警務処長に強硬派とされる●(=登におおざと)炳強(とう・へいきょう)副処長を昇格させる人事を決定。抗議活動の封じ込め強化に向けた動きとみられる。