安倍晋三首相の在職日数が20日、通算2887日となり、歴代単独1位となった。日英同盟の締結や日露戦争の戦勝、日韓併合、不平等条約の改正などにあたった明治、大正の宰相、桂太郎を抜いたものだ。
平成24年12月の再登板からでも、安倍首相は約7年にわたり、国政を預かっている。長期政権が日本の政治を安定させ、外交を有利に導いてきたことは間違いない。
安倍首相は、202年ぶりの譲位に伴う御代替(みよが)わり、集団的自衛権の限定行使容認を柱とする安全保障関連法の制定に加え、アベノミクス、自由貿易の推進などの経済活性化に取り組んできた。
平成から令和にかけて安倍首相は国政選挙で6連勝し、与党の議席数は野党を圧倒している。野党の支持率は低迷し、内閣支持率はおおむね安定している。
首相の自民党総裁任期は令和3年9月末まであり、記録の更新は続くだろう。
一方で在職期間の長さが、首相の評価を定めるものではないことも事実である。過去の仕事に満足して肩の力を抜いているときではない。日本には、全力で対応すべき難題が山積している。
「米中新冷戦」の開始は、米ソ冷戦終結以来約30年ぶりの国際構造の激変だ。安倍首相はトランプ米大統領と習近平中国国家主席の双方に笑顔をみせているが、危うい対応である。中国の脅威を見据え、自由と民主主義、「法の支配」、繁栄を守るべく、日本の舵(かじ)とりをしなければならない。
また、平成29年の衆院選で訴えた少子高齢化と北朝鮮の核・ミサイル問題という2つの国難は、どう突破するのか。
首相が「政権の最優先、最重要課題」と繰り返してきた拉致問題と、「政権の一丁目一番地」であるはずの憲法改正は一向に進展がない。「国家の基本に関わる極めて重要な問題」と語ってきた皇位の安定継承策のとりまとめも、まだである。
9月の内閣改造から2カ月もたたないうちに、2人の重要閣僚が公選法をめぐる疑惑で辞任した。桜を見る会の運営では自身に批判が集まった。長期政権のゆるみが出ているのは極めて残念だ。
首相の重任にある限り、惰性で務めることは許されない。緊張感を保ち、全力で難局に当たる姿を国民に見せてほしい。