若手研究員の自殺、日本カーボンを提訴 過酷なノルマとパワハラで遺族が損害賠償請求

日本カーボン株式会社で勤務していた25歳の男性研究員が自殺した事件で、遺族が会社側を相手取り、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。過酷なノルマと上司からのパワハラが原因だと主張しています。この記事では、事件の背景、訴訟の内容、そして企業におけるハラスメント対策の重要性について詳しく解説します。

未経験分野での研究と厳しい叱責:追い詰められた若手研究員

2019年、有名理系私立大学の大学院を卒業した男性は、東証プライム上場企業である日本カーボンに入社。滋賀県内の研究所に配属され、リチウムイオン電池の研究開発を担当しました。しかし、配属された研究分野は大学院での専攻とは異なり、未経験の領域でした。

男性は毎月、研究の進捗レポートの提出を求められていましたが、上司からは具体的な指示がないまま「お前は使えないね」「お前の考察は信用できない」などと厳しい叱責を繰り返し受け、再提出を強いられていました。

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パワーハラスメントの実態:無視、人格否定、容姿への言及

男性の上司からのパワハラは、進捗レポートへの叱責だけにとどまりませんでした。上司は男性を無視したり、「気持ち悪い」など身体的な特徴を揶揄する発言を繰り返していたといいます。精神的な苦痛に耐えかねた男性は、人事部に相談するも、研究所内でのフォロー体制は不十分でした。

2020年11月、男性は家族に「会社を辞めたい」と相談し、精神科を受診。日本カーボン側は男性の研究テーマと上司を変更、席替えなどの配置転換を行いました。しかし、席替えはわずかパソコンを挟んだ正面に変更されただけで、根本的な解決には至りませんでした。

労災認定から1年、ついに提訴へ

男性は2021年1月、社宅で自ら命を絶ちました。「ごめんなさい」「もうつらいです。さようなら」と記された遺書が残されていました。滋賀県の東近江労働基準監督署は、この事件を労災と認定。遺族は日本カーボン側と交渉を試みましたが、会社側は「パワハラもなく、業務上の心理的負荷もなかった」と主張し、交渉は決裂。労災認定から1年を経て、遺族は損害賠償を求めて提訴に踏み切りました。

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企業の責任とハラスメント対策の必要性

この事件は、企業におけるハラスメント対策の重要性を改めて浮き彫りにしました。企業は、従業員の安全と健康を守るだけでなく、精神的なケアにも配慮する必要があります。適切な研修の実施、相談窓口の設置、そしてハラスメント発生時の迅速かつ適切な対応が求められます。

若手社員の育成とメンタルヘルスへの配慮

新入社員、特に未経験分野で働く若手社員には、丁寧な指導とサポートが必要です。上司は部下の成長を促すと同時に、精神的な負担を軽減するための配慮も欠かせません。定期的な面談や相談の機会を設け、早期に問題を発見し、適切な対応をすることが重要です。

この事件の判決は、今後の企業のハラスメント対策に大きな影響を与える可能性があります。jp24h.comでは、引き続きこの事件の進展を注視し、最新情報をお届けしていきます。