ジル・ボーフィス氏(56歳)とその妻は東京での生活を捨て、日本の田舎にある廃屋をリノベーションした。同氏の見積もりでは、九州にあるその空き家の購入費用は1万ドル(約150万円)に満たなかった。リノベーション作業のほとんどを自分たちでやったが、同じようなことはもう二度としたくないと語る。
30年間東京で働いたジル・ボーフィス氏は生活環境を変えようと決心した。
【全画像をみる】日本の廃屋を約150万円で買ってリノベした夫妻は、もう二度と同じことはしないと誓った
56歳のフランス人である彼は、1990年代初頭にバックパッカーとして日本にやってきた。そして次の目的地に向かう直前に、今の妻に出会った。結局、飛行機には乗らなかった。
「基本的に、もう少しここにいよう、というのを何度か繰り返して」と、ボーフィス氏はBusiness Insiderに語る。「彼女と結婚してもう30年以上が過ぎた」
夫妻には31歳の息子がいる。
夫妻は自営業として映像制作と不動産管理に携わっていたため、ボーフィス氏は東京で働く必要がないことに気づいた。
「仕事柄、毎日忙しいというわけではない」とボーフィス氏は言う。「時間があるときは、東京にいるよりも、自然に囲まれているほうがいい」
コンクリートジャングルから遠く離れた場所で、生活をしながら仕事もできる拠点を築くことが目的だった。
アパートメントにする? いや、空き家がいい
夫妻は妻の故郷である九州の佐賀県に目をつけた。佐賀県は東京から飛行機で1時間半の位置にあり、日本陶磁器発祥の地として知られている。
九州は本州の南西に位置し、福岡、熊本、あるいは第二次世界大戦で原爆が投下された長崎などがある。
夫妻は空き家にターゲットを絞った。日本には空き家と呼ばれる放置された古い家がたくさんある。
ふたりは空き家バンク(Akiya Banks)と呼ばれる各地の自治体が管理している廃屋や空き家のデータベースを使って、自分たちに合った物件を探した。
そして、希望の家を見つけた。
夫妻は、陶芸の歴史が長い大川内山という山村に建つ伝統的な日本家屋に狙いを定めた。
ボーフィス氏の話によると、その廃屋は築年数が100年を超えていて、過去10年誰も住んでいなかった。
「そこで暮らしていた人々はすでに亡くなり、子供たちはその家を相続しようとしなかった」そうだ。「でも、私はリノベーションや内装作業は好きで、空き家を所有すれば、そういうことをする絶好の機会になると思った」