関東の地下鉄車両で「珍しい座席」消滅間近 最後に残った車両とは?


【画像】関東では最後の存在!地下鉄車両のクロスシート

 そんな3000A形が引退すると、関東エリアの地下鉄事業者所属車両(以下「地下鉄車両」)から消えるものがあります。それは、「車内のクロスシート」です。

 3000A形には、先頭車両の運転席背後にクロスシートが設置されています。これは、平成初期、同線の初代車両である1000形に改造で設置されたことが始まりです。

 1988年以降に1000形が車体更新を受けた際、運転席後方には車椅子スペースが設置されました。この場所にはもともと3人掛けの座席(ロングシート)があったのですが、車椅子スペースのためにこれを撤去すると、着席定員が減ってしまいます。そこで、車椅子スペースと反対側の座席を4人掛け(2人掛けの向かい合わせ)のクロスシートに変え、座れる人の減少を最小限にとどめました。そして横浜市交通局は、1992年にデビューした3000A形(当時は3000形)にも、同じ理由で運転席背後にクロスシートを設けたのです。

 しかし、1999年にデビューした3000N形では、この部分の座席がロングシートに戻され、その後、現在の4000形に至るまでクロスシートは復活していません。1000形が全廃となったいま、横浜市営地下鉄でクロスシートがある車両は3000A形のみです。

 関東の地下鉄車両では、横浜市営地下鉄のほか、東京メトロ南北線の9000系や都営地下鉄三田線の6300形(第13編成以前)にも、位置は異なるもののクロスシートが設置されていました。しかし、これらは更新工事や廃車により、いずれも消滅。結果、3000A形が、関東の地下鉄車両でクロスシートを持つ、唯一の存在となったのです。

 残存数もわずかとなり、遠からずの引退が予想される3000A形。横浜の地下鉄でクロスシートを楽しめる期間も、あとわずかとなりそうです。

 なお、関東では消滅寸前のクロスシートを持つ地下鉄車両ですが、ほかの地域に目を向けると、名古屋市営地下鉄上飯田線の7000形、大阪メトロ中央線の400形など、2025年現在でも複数の事例があります。また、「地下鉄車両」ではないものの、都営地下鉄浅草線では、乗り入れてくる他社車両(京急600形・1000形、千葉ニュータウン鉄道9100形)でクロスシートを楽しむチャンスがあります。さらに、有料の列車まで含めれば、東京メトロ日比谷線を走る「THライナー」や、副都心線・有楽町線を走る「S-TRAIN」なども、他社車両によるクロスシートつき列車として運転されています。

井上拓己



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