コメの値段の高騰が止まらない。果たして、この高騰はいつまで続くのか。また、高騰の抑止に有効な手段としては何があるのか。
ベストセラー『対馬の海に沈む』の著者、ノンフィクション作家の 窪田新之助氏のレポート「コメの値段はこの秋も上がる」 から一部紹介します。
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備蓄米放出でも高値継続
いま多くの人が気になっているのは、コメの価格が今後どうなるのか、ということだろう。政府は2月半ばになってようやく、需給を緩和するために計21万トンの備蓄米を放出することを決めた。
1年以内に同等・同量の国産米を買い戻すことが条件だ。初回の入札は3月10〜12日だった。24年産が10万トン、23年産が5万トンの計15万トンを対象とした。農林水産省は残り分の追加入札を3月26〜28日に実施するという。政府が備蓄米を放出すると決めたことで、先高観がやや後退したのは確かだ。
米穀安定供給確保支援機構は毎月、向こう3カ月のコメの「見通し判断DI(動向指数)」を発表している。DIが100に近づくほど需給は締まり、価格は高くなる。最新の調査によると、需給のDIは前月から10ポイント減って72に、価格のDIは前月から23ポイント減って54になった。コメの取引関係者がこうした判断をした要因として「国の政策」と回答した割合が、前月の7%から28%へと急増したことから、政府による備蓄米の放出が影響していることが窺われる。
ただ、私が取材した卸売業者は価格が下がるとまでは見ていなかった。3月中に計21万トンにまで積み上げても、民間在庫量は昨年の水準まで回復しないからだ。
ある卸売業者は、全国の民間在庫量について月別の推移をシミュレーションし、まさに「令和のコメ騒動」を予言していた。そのシミュレーションによると、6月末の民間在庫量は備蓄米を抜きにすれば62万トンとなる。前年同時期は115万トンで、その54%に過ぎない。これに備蓄米が放出されたところで、民間在庫量は83万トンにしかならない。これは、昨年同期の72%である。この卸売業者の役員はこう危惧している。
「政府が備蓄米をさらに放出しない限り、非常にまずい状況になるのは目に見えています」