アメリカ・ウィスコンシン州のティム・フリーデ氏は、毒を持つ生物への興味から、20年にわたって自ら蛇毒を体内に注射し、さらには意図的に蛇に噛まれるという過酷な挑戦を続けてきた。
AP通信によると、フリーデ氏は当初、単純な好奇心と自己防衛のために蛇毒への耐性を試みていた。少量の毒から始め、徐々に量を増やすことで体に抗体を作らせ、耐性を獲得しようとしたのだ。その実験的な方法は決して医師に推奨されるものではないが、免疫の仕組みとしては理にかなっているという。毒に繰り返しさらされることで、免疫システムは抗体を生成し、将来の暴露に迅速に対応できるようになるからだ。
フリーデ氏は、AP通信に「最初はとても怖かった。でも、回数を重ねるうちに慣れて、落ち着いて対処できるようになった」と語っている。
この過激な実験は現在、科学的に大きな意味を持つ取り組みとして注目され、フリーデ氏の血液は研究対象となっている。コロンビア大学のピーター・クウォン氏は、フリーデ氏を「18年かけて作られた驚異的な抗体を持つ特別な人物」と評し、研究チームはフリーデ氏の血液から複数の蛇毒に効く2種類の抗体を特定。将来的には、幅広い蛇種に対して有効な新しい抗毒素の開発につながる可能性があるという。この最新の研究成果は、科学誌「Cell」に掲載された。
世界保健機関(WHO)によると、毎年8万人から13万人が蛇に噛まれて命を落としている。現在の抗毒素は特定の蛇種にしか効果がなく、製造にも高いコストと時間がかかる。
とはいフリーデ氏が通常はありえない手法を用いていることは、いうまでもない。
フリーデ氏は現在、研究のためにバイオテクノロジー企業のセンティバックス社に勤めている。CEOセンティバックス・グランヴィル氏は、CNNの取材に「ティムがしているようなことは、他の誰もがしないように強く推奨する」と注意を促している。