賛成は漸減、本音は反対 養子案「世論」を読み解く 成城大教授・森暢平


 メディア各社は旧宮家養子案に関する世論調査をあまり実施してくれないが、近年の調査をいくつか比較すると、養子案賛成層は漸減傾向にあり、「わからない」と答える層の深層には、実は言い出しづらい反対に近い心情があることが分かる。

 旧宮家養子案について最新の調査は、毎日新聞社と埼玉大学に置かれる社会調査研究センターの「日本の世論2024」である(結果は『毎日新聞』2月28日付)。旧宮家養子案の結果だけ取り出すと、賛成42㌫、反対32㌫。ただし、この調査は設問がよくない。

「婚姻後女性皇族残留案」(A)、「旧宮家養子案」(B)について、①A・Bともに賛成、②Aに賛成、Bに反対、③Aに反対、Bに賛成、④A・Bともに反対―の4つから答えさせる形だからである。男系維持はおかしいと考える人は②を選び、27㌫。男系維持派は③を選び、7㌫だった。ここまでは旗幟(きし)鮮明である。だが、こだわりがない人は、①を選ぶはずだ。これは35㌫。A・Bともに反対という④は解釈不能だが5㌫あった。

 そもそもAとBは独立に聞くべきだ。そのうえで、Aについて、「夫と子を皇族にする案」と「夫と子を皇族にしない案」のどちらを支持するのかを聞いてほしかった。有効回答が1147(郵送法)とサンプルが十分なだけに設問が残念だ。

 それ以前だと、毎日新聞社が24年5月に電話で実施した調査がある(結果は『毎日新聞』24年5月20日付)。旧宮家養子案に賛成、反対とも35㌫で、「わからない」が30㌫だった。電話での調査で、サンプルは1093。

 賛成が4~3割台、反対が3割台と、毎日・埼玉大調査と似た傾向にある。

◇「共同」調査で反対74㌫ 数字が膨らんだ訳

 民意はだいたいこの辺りと思いきや、ほぼ同時期(24年4月)に実施された共同通信社の調査は傾向が大きく異なる(郵送法、サンプル数1966。結果は『秋田魁新報』24年4月28日付を参照)。旧宮家養子案に「賛成」7㌫、「どちらかといえば賛成」18㌫、「どちらかといえば反対」55㌫、「反対」19㌫、無回答2㌫であった。「どちらかといえば」をまとめると賛成は25㌫で、反対は74㌫。毎日調査と比較すると反対が2倍超である。



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