【ニューヨーク時事】トランプ米政権の国際機関への拠出金削減方針が、創設80年を迎える国連を直撃している。
深刻な資金難に陥る見通しから、グテレス事務総長は組織改革に向けたタスクフォースを設置。職員のケニア移転を含むコスト圧縮や任務の見直しに着手した。
「(改革は)われわれの活動を支える世界中の勤勉な納税者のためだ」。グテレス氏は3月、記者団にこう強調し、タスクフォースの立ち上げを発表した。7月までに改革案をまとめ、加盟国に提示する計画だ。
報道によると、タスクフォースは初期の改革案として、国連本部(ニューヨーク)や国連欧州本部(ジュネーブ)などの職員や業務の一部をケニアに移すことを検討。物価が高く人件費もかさむ先進国での陣容を縮小する狙いで、複数機関の統合も議論されている。
国連の財源は、主に加盟国が支払う拠出金で賄われている。中でも米国は最大の拠出国で、2023年には加盟国に義務付けられた分担金と任意の拠出金など合わせて約130億ドル(約1兆8700億円)を負担した。
193カ国が加盟する国連で、全体予算の約3割を米国が単独で担う計算だ。これに対し、米国同様に安全保障理事会の常任理事国として強い影響力を持つ中国の拠出金は約23億ドル(約3300億円)と米国の約5分の1、ロシアに至っては約4億ドル(約600億円)と30分の1ほどにとどまる。
トランプ大統領はかねて、米国が過剰な負担を強いられていると主張。「反米的だ」などとして1月に世界保健機関(WHO)、2月に国連人権理事会から離脱する大統領令に署名した。政権は現在、国連との関与の在り方を再検討中で、今後大幅な拠出削減が見込まれる。
こうした動きを受け、国連の各機関は既に新規採用の凍結や出張の見送りに加え、職員の解雇を進めている。国際移住機関(IOM)は3月、本部職員の約2割に当たる250人超の削減を発表。国連人道問題調整事務所(OCHA)も4月、500人規模の減員を明らかにした。