トヨタの水素事業トップは英紙の取材に対し、中国の水素カーへの技術が上がり、「もう時間がない」と焦りをにじませたという。電気自動車で後塵を排していた日本勢に、水素で巻き返しを狙うチャンスはないのか。
中国が作った巨大水素ルート
未来の車はどうなっていくのか。世界がトランプ関税をめぐる動きに翻弄されるなか、中国は水素で動く自動車の開発を着々と進めているという。トヨタの水素事業専任組織「水素ファクトリー」の山形光正プレジデントは、「時間が残されていない」と焦りをにじませたと英「フィナンシャル・タイムズ」は報じている。
トヨタや韓国の現代自動車をはじめとするアジアの自動車メーカーは、水素を将来の燃料の一つとして位置づけてきた。一方、近年では欧米勢が電気自動車(EV)の普及を推し進め、水素カーは鳴りを潜めていた。
水素は誤った扱い方や環境によって火災や爆発のリスクがあるものの、その技術や施設が確立されれば、ポテンシャルは非常に高いとみられている。水素カーはエンジンで水素を燃焼させるため、走行中に二酸化炭素を排出せず環境負荷も低い。
水素カーの時代は来るのか。先が見通しにくいなか、中国「新華社通信」は中国初となる水素トラックルートの開発を大きく報じた。
中国最大の石油企業である中国石化集団は、重慶と南部の港湾都市・欽州を結ぶ1150キロメートルに渡って、水素で走行する大型トラック用の輸送ルートの本格的な運用を開始した。中国西部における水素エネルギー開発の進展を示す重要な節目として報じられている。
トヨタの水素戦略
トヨタは水素の技術を30年以上にわたって開発し続け、2014年に発売した燃料電池車「MIRAI」はこれまでに2万8000台を販売している。
トヨタは電気自動車の急成長を受けて、当面の間は水素が乗用車市場を一変させるという考えを見直した。しかし、その代わりに、水素燃料電池技術を、トラックやバスといった商用車から普及させる方向へと舵を切っている。
COURRiER Japon