過去のどうしようもない悩みや問題について考えてしまい、思考が進まなくなることは誰しもあるだろう。それが、時間のムダとわかっていてもだ。そんなモヤモヤした悩みを解決する思考法を紹介する。※本稿は、岩尾俊兵『経営教育 人生を変える経営学の道具立て』(角川新書)の一部を抜粋・編集したものです。
● 1億2000万の“金鉱”をどう活かす? 日本人の脳みそに眠る価値とは
私は「人間の脳みそは価値を生み出す油田や金鉱のようなものだ」と書いています。むしろ、日本には頭脳という油田が1億2000万カ所もあって、そこから石油以上に価値あるものが豊富に湧き出るようにすれば、現代日本の問題は解決するわけです。「お金は刷ればいい」ではなく「価値(イノベーション)は創ればいい」というわけです。
この貴重な脳みそという資源が解決不能な悩みに支配されて停止してしまうのは、これ以上ないくらいムダです。解決「可能」な難問を何日も何年も解き続けるとか、悩み自体を楽しむというのならかまいません。しかし、解決できないことが明白で、自身も苦しんでいるのならば、そんな悩みと付き合う意味はありません。
とはいえ、私たちがそうした過去に捉われてしまいがちなのも事実です。そこでどんな現実・過去もプラスに変えて次なる一手を打ち続けるための思考道具を紹介していきます。この思考道具は、経営思想家ドラッカーの『マネジメント』『創造する経営者』から着想を得て筆者が考案したものです。
七転八起の四角形は、過去のマイナスを次の一手で打ち消す思考道具です。
あるいは現在起こったけれど自分には解決できない問題を過去として捉えて、前向きに次の一手を考える方法とも表現できるでしょう。
まず、4分割された四角形を描いてみます。そして、左上の「1」と書いているスペースに、自分ではどうすることもできない出来事を書いてみます。問題解決の三角形で解決できる出来事は書いてはいけません。問題解決の三角形でもどうしようもない問題だけを書いてみるわけです。
● 絶望から希望に変わる瞬間は 「四角を1周したとき」
次に、その下の「2」と書いてあるスペースに移って、その出来事のプラスの側面を書き出していきます。その出来事が起こって良かった部分を列挙するわけです。どうしても良いことを思いつかなければ「その出来事から学んだこと」を書いてみます。
その後、その右の「3」と書いてあるスペースに移って、その出来事のマイナスの側面を箇条書きにしていきます。これは難なく終わる作業です。ここまで書いていったら、「1」「2」を紙や手などで隠してしまいます。
そして「3」に書いていることだけに集中して、「ここに書いているマイナスを打ち消すにはどんな次の一手を打てばいいか」考えてみてください。もしかしたらすでに打っていた一手だったかもしれません。それでも過去を前向きに整理できればよいので、その一手を書けば十分です。
最後に、「3」の上にある「4」と書いてあるスペースに移って、先ほど考えた次の一手を書き込んでみてください。その後は、隠していた「1」「2」をもう一度眺めてみて、「1」から「4」まで順に反時計回りに1個ずつ確認してみてください。このことを表現しているのが回転矢印です。なんとなく、笑顔に見えるような矢印でしょう。