日本の国会で最近、「エコカー補助金」が取り上げられ、SNSを中心に話題になっている。
【画像】“移動するスパイ装置”とは? BYDが日本に投入する軽EV、英国で駐車禁止にされたEV、EVが集める「会話」「顔」「位置情報」
4月23日の衆院内閣委員会で、経済産業省のエコカー補助金(正式には「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」)について質疑が行われ、中国メーカーの自動車にも補助金が出ることが議論になった。
EVの中国最大手メーカーである比亜迪(BYD)が2026年後半に、日本の軽自動車市場に参入すると報じられた。日本では新車販売の約4割を軽自動車が占める中で、安さを武器にするBYDの軽自動車が参入することで、国内メーカーは戦々恐々としているという。
ビジネスという意味では、競争があるほど自動車のクオリティが上がることが期待できるので健全だといえるが、中国の場合は中国国内でも政府からの補助金があるため、安価な価格設定ができると指摘されている。関税問題で話題の米ドナルド・トランプ政権も、この点に批判の矛先を向けている。
ただ、問題はそればかりではない。実は最近、英国の政府系機関である国防科学技術研究所(DSTL)が作成した、EVに関する報告書がセキュリティ関係者らの間で話題になっている。この報告書では、中国製のEVが国家の安全保障にとって危険であると警鐘を鳴らしている。
英国では最近、EVに絡む話題が続いている。例えば、2027年末までに政府車両4万台をEVに転換するという計画が発表されたばかりだ。政府が導入するEVに中国製が含まれることへの懸念も出ている。
EVは「移動するスパイ装置」
DSTLの報告書では、特に中国製のEVを名指ししている。EVは基本的にすべて「コネクテッド」(システムやネットワークに接続されている)であり、インターネットやWi-Fi、Bluetoothなどに接続されている。
要は、メーカーのサーバに接続されることで、所有者に関するあらゆる情報が、本人の自覚のないままに送信されることになる。個人情報や位置情報、会話、車体の内外の画像、生体情報、体調に関するデータまでもが収集される。今後さらに収集されるデータは増えるだろう。
ここで懸念されるのは、中国製EVは、中国製の通信ハードウェアや部品、数多くのカメラを搭載していることから、車自体が盗聴や情報収集に活用できてしまうことだ。車両が大量に情報を収集するため、欧米政府関係者の間では、EVは「移動するスパイ装置」とさえ呼ばれている。
この懸念は今に始まったことではない。英国防省は4月、中国製の部品で製造されたEVについて、情報収集に使用される懸念があるとして、特定の軍事施設およびその周辺への駐車を禁止した。
この措置は、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、米国、英国の情報共有プログラム「ファイブ・アイズ」による機密性の高い軍事訓練基地を対象としている。こうした施設はライバル国などのスパイ活動の標的となっている。すでに、該当するEVで通勤する職員は、施設から最大3キロ離れた場所に駐車するように指示されたと報じられている。
EVはもはや単なる移動のための「機械」ではなく、ワイヤレスネットワークを介してさまざまな形式のデータを常に通信する、相互接続されたスマートデバイスとなっている。先に述べた通り、車両の行動データなどの機密情報が常にサーバに送られ、通信機器を接続すれば車内の会話なども収集される。さまざまなデータが通信システムを介して送られるため、第三者に傍受される可能性もある。ハッキングの対象にもなるのだ。
英国のメディアにコメントを寄せた保守党の情報筋は「EVは基本的に移動式のスパイだ。EVから収集できるデータの量は並外れており、特に車内で行われた会話も狙われる」と述べている。