【香港=藤本欣也】警官隊が包囲する香港理工大では21日も、数十人とみられる若者らが立てこもりを続けた。香港政府や中国共産党に反発する市民の抗議活動が長期化する中、香港親中派勢力の重鎮で、中国国務院(政府)が主管する「全国香港マカオ研究会」副会長を務める劉兆佳(りゅう・ちょうか)氏(72)が21日、産経新聞の取材に応じた。劉氏は、中国当局が中国政府主導で香港に情報機関を創設し、敵対分子の摘発を進めていくとの見方を示した。
劉氏はまず、10月下旬の共産党の重要会議、第19期中央委員会第4回総会(4中総会)で、中国当局が主導的に香港問題に関与していく方針が決まったと指摘。今後、香港に国家分裂や反乱の扇動、政権転覆などを禁じる法律を制定するため、中国自らが乗り出す-とした。
「香港基本法23条に規定されているように、本来は香港政府自らが制定すべきものだが、中央政府は香港政府にそれができるとはもはや信じていない」
このため、中国側は(1)国家の安全を定めた中国本土の法律を香港に適用させる(2)中央政府が香港のための法律を特別に制定する-などさまざまな措置を研究していると劉氏はみている。
「そもそも、こうした法律が香港に制定されていれば(一連の抗議活動は)全て犯罪になり、有効に取り締まることができた」。中国側は再発防止に向けて立法化を急いでいるという。
その一環として、劉氏が指摘するのが「情報機関」の創設だ。「英領時代、香港政庁には情報機関が設けられ、反英・反政庁分子に関する情報を収集し、摘発に当たっていた」。英情報機関、MI6などが関与していたとみられている。
すでにマカオには国家安全法を履行するため国家安全委員会が設立されているが、「(中国当局は)中央政府主導で、香港に特化した国家安全委員会を設け、情報収集活動を進めていく」との見方を示した。
劉氏は、香港政府中央政策グループの首席顧問や、中国の全国政治協商会議委員などを歴任した香港親中派の要人として知られる。