ルポライター・國友公司と映像ディレクター・大前健太が語る「過酷な仕事でモチベーションを保つ秘訣」

ルポライターとして『ルポ西成』で鮮烈なデビューを飾り、新刊『ワイルドサイド漂流記 歌舞伎町・西成・インド・その他の街』を刊行した國友公司氏と、TBSを退職後、フリーの映像ディレクターとして『国境デスロード』などを手掛ける大前プジョルジョ健太氏。彼らの作品は、時に過激で危険な現場に踏み込むことで知られています。しかし、彼らが本当に追い求めているのは、単なる「危険」ではなく、その先にある人間ドラマや社会の真実です。本稿では、そんな二人が、過酷な仕事環境の中でいかにして高いモチベーションを維持し、バイタリティを保ち続けているのか、その秘訣に迫ります。

ルポライター國友公司氏と映像ディレクター大前プジョルジョ健太氏が対談する様子ルポライター國友公司氏と映像ディレクター大前プジョルジョ健太氏が対談する様子

踏み出す勇気:現場で得られる「予想外の収穫」

過酷な取材現場においては、躊躇や迷いが生じる瞬間が少なくありません。しかし、國友氏は「思い切って一歩踏み出した取材で、後悔したことは一度もない」と断言します。事前に面倒に感じたとしても、実際にその場に身を置き、対象に深く関わることで、常に「やってよかった」という感覚が得られると言います。この感覚には、大前氏も強く共感を示し、自身の経験と重ね合わせています。

例えば、ホームレスの男性から「明日、丸一日炊き出しに行くから一緒に行こうよ」と誘われた際、最初は戸惑いを覚えたという國友氏。しかし、実際に同行した結果、そこには予想をはるかに超える「多様な情報」と「貴重な収穫」があったと振り返ります。こうした「行動を起こす」ことによって得られる新しい発見こそが、彼らの取材の大きな原動力となっているのです。彼らは表面的な「危険」を追うのではなく、その危険な状況からしか見えない「真の価値」を探し求めていると言えるでしょう。

年齢とバイタリティ:モチベーション低下への「自己暗示」

どんなに好きな仕事でも、長く続けていると誰もがモチベーションの低下やバイタリティの減退を感じることがあります。特に、肉体的・精神的にハイカロリーな取材を続ける二人は、この問題にどのように向き合っているのでしょうか。

國友氏は、自身の年齢とともにバイタリティが落ちていることを率直に認めます。26歳で西成に潜入した頃のような、何も分からないまま突き進む力は薄れ、今では「こうすれば稼げる」「効率的」といった計算が先に立ってしまう部分があるといいます。結果として「無駄なことができなくなっている」と感じ、それが行動力の低下に繋がっていると分析します。彼は、改めて「お金のためじゃない取材」の重要性を認識しています。

一方、大前氏は、元々バイタリティが高いタイプではないとしながらも、ユニークな方法でモチベーションを維持しています。それは、自分自身に「まだ若い」と言い聞かせる「自己暗示」です。現在30歳の大前氏は、40歳になってもこの言葉を使い続けるだろうと語り、「ファッションおっさん」には絶対にならないという強い意志を見せます。実際に、アンデス山脈を4時間かけて登るような過酷な状況でも、「俺は若いんで大丈夫です」と声に出すことで、疲労困憊の状態からでも活力を取り戻し、前に進むことができた経験を明かしました。自分自身を信じ、意識的に活力を生み出すこの方法は、彼らの行動力を支える重要な柱となっています。

困難を乗り越える「問い」の力:仕事における探求心

大前氏がモチベーションを保つ上で「自己暗示」と並んで重要視するのが、「問いを立てる」という行為です。彼は、仕事に取り組む際、無理矢理にでも自分の中で疑問やテーマを設定し、それをクリアしていくことを意識的に行っていると言います。

例えば、「この現場では何が一番の課題なのか?」「この人物の本質はどこにあるのか?」といった具体的な問いを立てることで、単なる作業としてではなく、深い探求心を持って仕事に臨むことができます。このような「問い」や「テーマ」が明確であれば、どれほど困難な状況に直面しても、それに対する答えを探し求める過程自体がモチベーションとなり、意欲が落ちることはないと大前氏は語ります。この、常に疑問を持ち、それを解決しようとする探求心こそが、彼らが現場で真の価値を見出し、視聴者や読者に深い洞察を提供する専門性と信頼性の源泉となっているのです。

結びに

ルポライターの國友公司氏と映像ディレクターの大前プジョルジョ健太氏が語った、過酷な仕事におけるモチベーション維持の秘訣は、「一歩踏み出す勇気」「年齢を言い訳にしない自己暗示」、そして「常に問いを立てる探求心」に集約されます。彼らは単なる危険を追い求めるのではなく、その先にある真実や人間模様を深く探求することで、自身の仕事に持続的な価値と意味を見出しています。彼らの経験と専門性は、あらゆる分野で困難な状況に直面する私たちに、仕事への向き合い方、そして自身のバイタリティをいかに育むべきかについて、貴重な示唆を与えてくれます。


参考文献: