社会人が「メンタルヘルスの不調」を抱えたとき、大切なのは「休職」という選択を取ることだ。だが、休職したとして“復職できるのか”と不安に感じる人も多いだろう。復職までにどのような段階を経て回復していくのか、1万人以上のビジネスパーソンと向き合ってきた産業医が解説する。※本稿は、武神健之『未来のキャリアを守る 休職と復職の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。
● 休職している人たちが 通る3つの時期
私は、メンタルヘルス休職をしている人たちとの産業面談を月1回、積極的に行っています。「最近の調子はどうですか」という言葉で始まる産業医(編集部注/事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師)面談です。
休職している社員の生活の様子を聞いたり治療状況(通院頻度、内服薬など)を確認したりし、今どのような時期にあるのかと推測してから、そのときに必要なことをヒアリングし、提案しています。
休職している社員には、大きく分けて3つの時期があります。3つの時期には明確な基準があるわけでありません。あくまで「今はこの時期なんだな」「この時期とこの時期の移行中だな」と、状況を整理するために捉えるためのものです。
● 空っぽになったエネルギーを 充電する「休息期」
まず、休職したてのタイミングを休息期と呼んでいます。治療が始まり、内服を調整している。疲れているのに、休もうとしてもなかなか寝ることができない。家の中でソファやベッドで過ごしている時間が多い――休息期とはそのような時期です。
この頃は、休職に入ったばかりで、まだソワソワして落ち着かなかったり、日中家にいることが慣れなかったり、内服をコントロールしているため、かなり具合が悪くなることもあります。
我慢して頑張っていた時期が長かった人のなかには、休職に入り肩の力が抜けた途端、症状がもっと出てきて、休み始めたのに、調子が悪化する人もいます。そんな人は、休んでも休んでもベッドから離れられない状態が続きます。
休息期は、短い人で1ヵ月程度、長い人では3ヵ月以上に及ぶこともあります。
この時期の人には、思いっきりダラダラすること、食べたいときに食べたいものを食べていいこと、朝起きるためのアラームをつけない生活をすることなどを伝えています。
この時期はまだ睡眠は安定していないことが多く、社員には、昼間でも眠ければ我慢せずに昼寝をすることを推奨しています。働かないでダラダラしている上に、昼寝までしてもいい。そんな自分を責めるのではなく、そんな生活する自分を許してあげようとお願いしています。
こうやってしっかり休息を取ることで、空っぽになった自分のエネルギー電池を充電する期間となります。
● 少し元気が戻ってくるが 焦りは禁物の「回復期」
休息期も後半になると、睡眠が改善してきて、日中起きている間に何かやり出そうと思える時期になります。この頃から、実際に日中の半分以上を何かして過ごせているようになり復職準備に取り掛かるまでが「回復期」です。
回復期の初期は、内服薬も定まり、少し睡眠も安定してきます。多少の睡眠障害があるものの、休職開始の時期よりも眠れる日のほうが多くなってきます。そうすると、日中気分が良いときに、少し家の中で動いたり外出してみたくなったりします。