外国人が日本の土地を買えないようにすべきだ――。不動産価格の高騰を受けて、外国人が日本の不動産を購入することに不満を持つ人が増えているようです。購入を規制すべきだとする主張も話題になっています。しかし、残念なことに、外国人の不動産購入を規制しても不動産価格は下がりません。この問題の本質は、「不動産価格の高騰」ではなく、別のところにあるのです。外国人が日本で不動産を取得して問題になるケースについて解説します。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
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● 外国人が土地を購入するのは自由…そもそも規制できるのか?
国民民主党の榛葉賀津也幹事長が参院外交防衛委員会で、外国人が日本の土地を買っていることで「国民が不安を覚えている」と述べたことがSNS上で話題になりました。
具体的には、
「北海道のニセコや富良野、軽井沢、沖縄の島を中国人やシンガポール人、ほとんど華僑だが、買い漁っている」
と指摘したうえで、問題点として、
「飛行場やダムの周辺、水源地、温泉源になる鉱泉地をどんどん買っている。対馬の自衛隊基地周辺など重要土地のすぐ脇を買っている傾向もある」
という安全保障上の問題と、
「民事上も様々な問題がある」
その例として、
「老朽化したマンションの大規模修繕の際に、この方々が協議に応じないとできない」
といった問題を挙げました。
ネット上では「中国人が日本の土地を買えないようにすべきだ」といった過激な論調が見られたのですが、この問題、いったいどういう問題なのでしょうか?外国人に土地を買われることの何がよくないのか?整理してみたいと思います。
最初に外国人や外国企業が土地を購入することについては、海外でも一定の規制はありますが、原則は自由とされています。一番根本的な協定として、WTOの加盟国では「内外無差別の原則」が求められていて、外国人であっても不動産所有や不動産取引は認められるべきだとされています。一方で安全保障と住宅政策による例外規定も認められていて、各国はこの点での規制を取り入れています。
たとえば、アメリカでは軍事施設や空港、重要施設の周辺エリアでは外国人投資に事前審査が義務付けられていて、リスクがある場合は大統領令で取引を停止できます。
住宅政策の規制例では、カナダが住宅価格の上昇を理由に2023年から2年間、カナダ人とカナダ企業以外の住宅購入を禁止した例があります。
また、恒常的に不動産価格が高騰しているシンガポールでは、外国人がコンドミニアムを購入する際に60%の高額な加算印紙税を課すという実質的な二重価格を導入した例もあります。
日本の問題とされるのは、安全保障上の規制エリアが狭いことと、それ以外の土地や住宅取得について、外国人に対する制限がほぼないことだとされます。ではこのままだとどのような問題が発生するのでしょうか?3つの視点で解説したいと思います。
● 1. 不動産価格の高騰
この問題に関するネットの反応を見ると、ネット民が一番不満に感じているのが不動産価格の高騰です。外国人がマンションや観光地の土地を買い漁っていることで、そういった人気のある土地がもはや日本人が購入できない価格に高騰してしまったことが問題視されているようです。
その象徴ともいえるのが北海道のニセコで、土地の価格が高騰しただけでなく、そこにやってくる外国人の所得水準にあわせて物価まで上昇してしまいました。ラーメンや牛丼の価格が2000円と、一般的な日本人の金銭感覚では生活できない町になってしまったのです。
いずれこれと同じことが京都や軽井沢、浅草に起きてもおかしくないのですが、それを止める手立てがないというのがインバウンドの多い地域を悩ませています。