突然爆発し1000度以上で燃え続ける…スマホを寝ている間に絶対充電してはいけない怖い理由


【図表】リチウムイオン電池製品の発火事故の件数

■スマホのバッテリーが原因の火災が起きている

 2019年、カザフスタンで14歳の少女が、スマホを充電しながら音楽を聴いたまま眠りについたところ、スマホが爆発、死亡したという痛ましい事故があった。

 同様の事故はインドなどでも起きており、日本でも同年秋、充電器につけっ放しにしていたスマホからの出火と見られる火災で就寝中の夫婦が亡くなっている。

 「携帯電話にも使われているリチウムイオン電池(LIB)は、衝撃を加えたり、圧迫したりすると発火の危険があります」

 そう説明するのは、身の回りの製品の事故原因を調査するNITE(製品評価技術基盤機構)製品安全センター製品安全広報課の宮川七重課長だ。

 近年、全国のごみ処理施設で、一般ごみに混ざって廃棄されたLIBが原因とみられる火災が相次いでいるという。スマホも壊れれば内部のLIBが発火する可能性がある。

 「火災事故では製品も燃えてしまっているため、出火原因を特定できないことも多いのですが、スマホが原因と思われるとして毎年、複数件の事故報告があり、中には家が全焼してしまった事故もあります。NITEでは製品の事故情報を『NITE SAFE-Lite』というサイトで公開していますが、『スマホ 熱い』で検索すると、300件以上の事例が表示されます」(宮川氏)

■灯油と同じくらい燃えやすい電解液

 なぜLIBは燃えやすいのか。LIB内部にはプラス極とマイナス極があり、両極が直接つながるとショートするので、そうならないよう間にセパレーターが入っている。電極とセパレーターを薄いフィルムにして重ね、平たい電池の形にしているのだ。内部には電解液が入っており、これは「灯油と同じくらい燃えやすい」という。

 「スマホ内部の電池は重ねたフィルムの外側をアルミで覆っているだけで、外力に弱いつくりになっています。それをスマホ本体のケースで守っているので、本体が曲げられたり強い衝撃を受けたりすると、電池内のフィルムが破れ、ショートして発火する場合があるのです」

 同センター事故調査統括課の板越秀夫参事は指摘する。

 「胸ポケットにスマホを入れていて、かがんだ拍子に床に落としてしまった経験は、多くの人がお持ちでしょう。1回だけなら大丈夫なことが多いのですが、何度も落とすと内部のバッテリーが傷つき、発火する可能性が出てきます。お尻のポケットに入れたまま階段で後ろに転び、階段の角にスマホが当たって折れて発火したといったケースもあります」

 LIBは熱にも弱い。特に事故が起きやすいのは炎天下で車のダッシュボードにスマホを放置した場合だ。

 「電解液には有機溶媒を用いており、高温にさらされると可燃性のガスとなってバッテリーを膨らませ、外に噴出することもあります。そこに火があれば簡単に着火しますし、電池がショートしたときの火花や熱で発火する危険もあります」(板越氏)

 「可燃性ガスが噴出され、炎が勢いよく燃えているときは、水をかけてもなかなか消えません」(宮川氏)

 LIBが異常発熱や発火を起こして温度の制御ができなくなる状態を「熱暴走」と呼ぶ。LIBの熱暴走時の内部温度は、660℃以上と考えられ、熱暴走の末期には1000℃以上の高温になる。

 ただ、スマホ本体による発火事故は、近年は減ってきているという。

 「携帯電話の電池の発火事故が多かったのは、携帯電話が本格的に普及する前の話になります。日本の場合、携帯電話や電池の製造メーカー、通信事業者とも大手が多く、品質管理もしっかりしていて、LIBを使用する他の製品に比べて、スマホによる事故は非常に少ないと言っていいと思います」(板越氏)

 近年のLIB関連の事故の製品ごとの件数の推移を見ると、スマホよりも、スマホ充電用のモバイルバッテリーのほうが事故が多くなっている。

 使用されている製品数はスマホが最も多いので、製品1台あたりのスマホの事故率は低く、モバイルバッテリーの事故率は高い。

 「モバイルバッテリーは現状では日本のメーカーはほとんど製造しておらず、国内で流通しているのはほぼ輸入品となっています。一部に品質が良くない製品もあり、中には最初からプラス極、マイナス極、セパレーターの位置がずれていて、いつショートしてもおかしくないようなものもあります」(同)

 というから怖い。発火は充電時に起きることが多く、初めて充電した際に発火したケースもあるという。カバンに入れていたら電車の中で発火したという事例や、落とした衝撃で燃え出したという報告もある。



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